相続した不動産にかかる『相続税』は、このようにして決まる


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相続資産で最もその比重を多く占めるのが不動産です。そして、不動産を相続したときにかかる税金の中でも、額が大きくなりやすい物として「相続税」が挙げられます。

不動産にかかる相続税は、その不動産の相続税評価額によって決まるのです。

以下、土地・建物・マンションの場合に分けて解説いたします。

1 土地の不動産評価額

宅地の相続税を導き出す基準となる評価額に関しては、「路線価方式」と「倍率方式」という2種類の評価法のどちらかで算定されます。

宅地以外の農地などは「比準方式」で算定されることがあります。

路線価方式

路線価は、「路線価図」と呼ばれる地図を確認した上で、相続の対象となっている土地がどの路線(道路)に面しているのかを基準に算出します。
それぞれの路線には、数字とアルファベットの組み合わせが記号で明記されています。数字は、土地1平方メートルあたりの路線価(千円単位)、たとえば、「150C」と書かれている路線に面している土地は、1平方メートルあたり15万円が基準となります。

アルファベット(A~G)は、借地権割合を表します。自分で所有している土地を自分で使っている場合には関係がないのですが、他人が所有している土地を借りていたり、自分が所有している土地を貸し出したりしている場合に問題となります(他人の土地を借りる権利である「借地権」も相続の対象になるのです)。

A~Gまで、借地権割合は10%刻み、7段階で示されており、Aは最大の借地権割合「90%」を示し、Gは最小の「30%」を意味します。

Cは70%を表していますので、「150C」を前提にしたとき、路線価はこうなります。

  • 他人が所有している土地を借りている場合の「借地権」の路線価
    …1平方メートルあたり10万5千円(15万円×70%)
  • …1平方メートルあたり4万5千円(15万円×(1-70%))

つまり、亡くなった被相続人から引き継いだ土地であっても、他人に貸し出しているのであれば、評価額は大幅に下がり、相続税も抑えることができるのです。
なお、借地の貸し主という立場も相続によって引き継がれますので、地代などの賃料を相続人に支払うよう、借り主に請求できます。

さらに、路線価方式では、標準的な土地よりも使い勝手がよくない土地について、評価額を引き下げる「補正」が行われます。この補正対象になる土地であれば、さらに相続税を抑えることが可能です。

<補正の例>
不整形地補正

路線に垂直に接している長方形の土地を「整形地」と呼ぶのに対して、整形地でない土地を「不整形地」といいます。不整形の度合いが大きいほど、相続税評価額が下がります。

間口狭小補正

土地が路線に接している部分の長さを「間口」といい、間口が短いほど使いづらいと考えられ、相続税評価額が下がります。

奥行価格補正

路線から土地の最も遠い地点までの距離(奥行)が長いほど、相続税評価額が下がります。

奥行長大補正

間口と奥行の割合を比べて、奥行のほうが2倍以上長い場合は、相続税評価額が下がります。

広大地補正

その地域の宅地としての標準的な面積と比べて、著しく大きい宅地の場合は、相続税評価額が下がります。広大地を販売するときは、販売しやすい価格になるまで宅地を分割することになり(これを「開発行為」といいます)、その際に私道や公園など、宅地以外の目的の公的施設を設置しなければならない場合があるためです。

がけ地補正

その土地の中に「がけ」(地表面が水平面に対し30度を超える角度があり、高低差が2メートルを超える急傾斜地)がある場合は、土地に占めるがけ部分の面積や、傾斜の方角によって、相続税評価額が下がります。

<そのほか、路線価が下がりうる場合>
セットバックが必要な土地

市街地に古くからあり、幅員4メートルに満たない道路に面した土地は、道路の中心線から2メートル手前の位置まで、道路として提供しなければなりません(建築基準法42条2項)。この土地所有者に課された義務を「セットバック」といいます。
セットバックしなければならない部分は宅地として使えないわけですから、全体としての評価額は低下することになります。

道路からの高低差がある宅地

道路からその土地へ入るときに、上り坂や下り坂があり、周辺の土地と比べても高低差があるときは、使い勝手が比較的よくないものとして評価額が下がる場合があります。

地表に甚だしいデコボコがある宅地
甚だしい振動がある宅地
利用価値が著しく低下している宅地

騒音、日照阻害、臭気など、日常生活に相当な支障があると一般に考えられる要素を含んだ宅地については、評価額が下がります。

生活の本拠として使っていた宅地

亡くなった被相続人が生活の本拠として使っていた宅地について、一定の範囲の親族が引き継ぐなどした場合は、小規模宅地等の特例を適用することで、相続税評価額が80%減りますので、相続税の節税に繋がります。

小規模宅地等の特例

(居住用宅地の場合 330平方メートル以下) 次のいずれかを満たした場合に適用されます。

  • 被相続人が所有していた宅地を、その配偶者が相続したとき
  • 被相続人が所有していた宅地を、その配偶者以外で同居していた親族が相続し、相続税申告期限を超える期間にわたって住んでいるとき
  • 被相続人が所有し、生計をひとつにしていた親族が住んでいた住宅を、その親族が相続し、相続税申告期限を超える期間にわたって住んでいるとき

※この小規模宅地等の特例が適用されることを目指し、相続税対策の意味でも居住用の二世帯住宅を建てるご家族が増えています。二世帯住宅に親世代と子世代が住むことで「同居の親族」になりうるからです。

(事業用宅地の場合 400平方メートル以下)

次のいずれかを満たした場合に適用されます。

  • 被相続人が所有していた宅地を、その事業を承継する親族が相続し、相続税申告期限を超える期間にわたって使用しているとき
  • 被相続人が所有し、生計をひとつにしていた親族が事業用に使っていた住宅を、その親族が相続し、相続税申告期限を超える期間にわたって使用しているとき

※ただし、その「事業」の内容が、不動産貸付業や駐車場業である場合は、面積の要件が「200平方メートル以下」と厳しくなり、評価額の減額幅も「50%」にとどまります。

倍率方式

路線価図に載っていない地域の土地については、その土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を掛け合わせて相続税評価額を求める方式が用いられます。

固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税の「納税通知書」に添付された課税明細書に記されています。固定資産税評価額は年度によって変動する場合がありますので、相続開始日(被相続人の死亡日)が含まれる年度であることを確認してください。

土地の固定資産税評価額は、時価(取引価格)の70%前後となるのが通常です。

次に倍率を確認します。倍率は地域によって変わりますので、国税庁ホームページの財産評価基準の評価倍率表、不動産が属する地域を探します。地目(用途)によっても倍率が異なりますので、「宅地」「田」「畑」「山林」「原野」「牧場」「池沼」のいずれに該当するかを確認した上で、倍率を確定させます。

倍率の左隣に「純」と書かれているのは、純農地を意味し、「中」は、中間農地等を意味します。宅地への転用が想定されておらず、周辺にある宅地の評価額の影響を受けません。純農地よりも中間農地のほうが、市街地の近くに位置する農地である傾向があります。

ちなみに、評価倍率表に「路線」と書かれている場合、その地域の宅地については、別に路線価表が用意されていますので、それを参照して相続税評価額を導きます。

比準方式

市街地やその周辺にある農地では、「宅地比準方式」で相続税評価額が算定されます。つまり、その農地が将来的に宅地へ転用されることを前提として評価額を決めるのです。そのため、他の農地よりも評価額が高くなることがあります。純農地や中間農地と比べて、周辺にある宅地評価の影響を受けやすくなるのです。

相続税評価額 = (その農地などが仮に宅地だとした場合の評価額)-(宅地に転用するために要する造成費相当額)

造成費には、整地に要する費用、地盤改良に要する費用、浸水を防ぐための「土盛り」に要する費用、斜面の崩落を防ぐための「土留め(擁壁)」に要する費用が含まれます。

評価倍率表の中で「市比準」「周比準」と書かれている農地では、この比準方式を用いて相続税評価額を算出します。
「市」は市街地農地、「周」は市街地周辺農地を意味します。

比準方式による農地は、評価額が高くなりやすいため、市街化区域にある500平方メートル以上の農地に適用される可能性がある「広大地補正」で、評価額を下げられないか検討すべきです。詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。

2 建物の不動産評価額

その建物について認定された固定資産税評価額が、そのまま相続税評価額となります。

固定資産税・都市計画税の「納税通知書」に添付された課税明細書に記されています。
年度によって変動する場合がありますので、相続開始日(被相続人の死亡日)が含まれる年度であることを必ず確認してください。

建物の固定資産税評価額は、その建築に要した費用の約50~80%の額となるのが通常です。

建築途中の建物を相続した場合

被相続人が費用を負担して建築していた建物が、建築途上で被相続人が死亡し、相続人が相続した場合、その建築途中の建物の相続税評価額はどうなるのでしょうか。まだ固定資産税評価額が確定していない段階なので問題となります。

建築中の建物を相続した場合は、

相続税評価額 = 総工費 × 工事進捗率 × 70%

で算出します。

建築に使われている材料の費用としては、費用現価(総工費×工事進捗率)で表されますが、建築途中である以上は本来の使途で使えない工作物であり、十分な価値が伴わないことを考慮して、評価額は30%減額となるのです。

裏を返せば、完成した家屋よりも、まだ建築が終わっていない家屋のほうが、相続したときの相続税を節税できることになります。


3 マンションの占有部分に関する不動産評価額

分譲マンションの一室を相続した場合は、その一室(専有部分)の所有権を引き継いだことになります。つまり、マンションの一部の所有権と、真下にある土地の一部の使用権が合わさった価値が不動産評価額となります。

土地の評価額、建物の評価額は、すでに説明させていただいたとおりです。まずは、マンションの敷地と棟全体の評価額を算出します。

ここでポイントとなるのが、分譲マンションの所有権に関する「持分割合」です。マンション全体に占めるそれぞれの部屋(専有部分)の割合を意味します。各部屋の持分割合は、マンションの所有権について法務局が記録・保管している不動産登記簿に記されています。


4 不動産を相続するにあたっての注意点

2人以上の相続人がいるときは、相続の開始によって、不動産を含むすべての遺産について法定相続分を持ち分とする共有関係となります。
被相続人が遺贈をしていたり、遺産分割方法を指定していたり、相続人同士で話し合って遺産分割協議を整えない限りは、当然に複数相続人の共有となります。

現金であれば分割も容易ですが、不動産は評価額が公平になるように分割することは非常に難しい作業となります。不動産を売却して現金化するにしても、常に買い手が付くとは限りません。
改良工事や修繕をしても売れないとすれば、そのぶんだけ相続の負担は重くなります。

しかも、共有関係にある不動産は、他人に貸すことは持ち分の過半数の同意、すべてを売却することは共有者全員の同意が必要となり、活用がとても難しくなります。
不動産を引き継ぐ相続人は、遺産分割によって1人に確定させておくほうが、使用・収益・処分が、所有者ひとりの決断だけで実行できるので有意義です。

また、不動産による相続税の節税に気を取られるあまり、その後、毎年納めることになる固定資産税のことを忘れないように気をつけたいものです。