従業員に労働組合に入る義務を課す「ユニオンショップ協定」とは? 知っておきたい2つの裁判例

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従業員の立場を不安定にする協定? その長所と欠点

ユニオンショップ協定とは、その会社に勤めている従業員について、特定の労働組合への加入を義務づける、会社と労働組合との間に結ばれた協定(契約の一種)です。裏を返せば、労働組合に加入しない従業員、労働組合から脱退・除名された従業員を、会社は解雇する義務を負うことになるのです。

労組側にとっては、従業員に対する事実上の加入強制となり、組織力を増すことができるメリットがあります。また、会社側にとっては、労働者側との交渉窓口を一本化できるメリットがあるといえます。

ただし、そのような協定は、会社で働く従業員に「労働組合への所属」という事実上の強制加入条件を課すものです。

もっとも、従業員から役員(取締役)や、会社を代弁する立場の管理職に出世すれば、それ以降は法律上の労働者でなくなり、ユニオンショップ協定の適用から外れるため、たとえ労働組合を離れても会社に在籍し続けることができます。しかし、そうでない限り、組合員でなければ勤め続けられません。そのようなユニオンショップ協定は、従業員の立場を不当に不安定にさせるようにも思えます。

それでも、労働組合法7条に定められた不当労働行為の例外(同条1項但書き)として「ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない」と定められていることから認められるのです。

従業員にとっても、所属している労働組合が強くなれば、もし、会社から不当な扱いを受けたとしても、それに対して組合の組織力や知見を借りて徹底的に戦えるメリットがあるといえるでしょう。

では、労働組合を外れて、別の労働組合を作るなどした場合にも、従業員は解雇されるのでしょうか。
ユニオンショップ協定の適用はどこまで通用するのか、その限界ラインが問題となります。

1 労働組合を乗り換えた従業員は、どうなる? ―― 三井倉庫港運事件(最高裁判所 1989年12月14日判決)

どのような事例か?

労働組合との間でユニオンショップ協定が結ばれている会社で、とある従業員(6人)は、協定の対象となっている労働組合だけでなく、別の労働組合にも加入していた。
かねてより、6人の従業員はユニオンショップの対象となっている労働組合に対する不満感を募らせており、あるとき6人同時に組合からの脱退を申し出た。その直後に、別の労働組合の分会をつくり、加入した。
そのことを知った会社は、その日のうちにユニオンショップ協定を理由に、その従業員6人に対し、解雇を申し入れた。
そのうち3名は、ユニオンショップ協定の対象となっている元の労働組合に復帰し、会社としても再雇用を行った。
一方、残りの従業員らは、復帰を拒否し続け、会社に対して団体交渉を要求した。しかし、会社は交渉を拒否した。そのため、従業員らは解雇を無効であるとして、会社を相手取って提訴したという事例。

どのような判決が出たか(判決理由の意訳)

一審・二審ともに、労働者側が勝訴し、会社側が上告

⇒ 最高裁判所も、本件の解雇を無効だと認定し、労働者側の勝訴を確定させた。

ユニオンショップ協定は、従業員に対して事実上、労働組合への加入を強制するルールとなる。加入しない従業員を会社は解雇できるのが原則である。

しかし、そのようなユニオンショップ協定をもってしても、労働組合が複数ある場合に加入する組合を選択する自由、あるいは別の労働組合を従業員が独自につくる自由まで、解雇というペナルティで威嚇することによって制限することはできない。
なぜなら、労働者の団結権は、日本国憲法28条で認められた基本的人権だからである。

よって、たとえ労働組合を脱退しても、他の労働組合に加入したり、新たな労働組合を結成した従業員に対してまで、ユニオンショップ協定を適用して解雇することは、公序良俗に反し、その効力を認めるべきではない(民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」より)。

本件では、ユニオンショップ協定のほかに、解雇を正当化できるような事情は存在しないから、解雇は認められない。

「三井倉庫港運事件」に関するコメント

ユニオンショップ協定といえども、憲法が規定した労働者の団結権のほうが優先するため、その団結権を侵害するようなユニオンショップ協定は、憲法に反して無効となります。

ただし、「労働組合に一切加入しない自由」よりは、ユニオンショップ協定のほうが優先すると考えられています。よって、ユニオンショップ協定のある会社に勤める以上、少なくともどこかの労働組合には入っていなければならないといえるのです。

憲法は、基本的に国家が従うべき法規範です。原則として、民間企業が従うようなルールではありませんが、憲法28条は、(官公庁とそこに勤める公務員でもない限り)多くの場合には民間会社と従業員の関係を定めています。よって、例外的に民間の関係を直接的に規律する条文といわれています。

本件では、会社側が敗訴しました。しかし、仮に従業員が脱退を申し入れる前の段階で、労働組合側が先に除名をしていれば、理論的には会社による解雇は有効になりうるため、裁判所の結論も変わっていたかもしれません。


2 組合からの脱退を取り消された従業員の立場は? ―― 日本食塩製造事件(最高裁判所 1975年4月25日判決)

どのような事例か?

労組との間でユニオンショップ協定が結ばれている会社において、労使紛争でトラブルを起こしたある組合員(従業員)が懲戒解雇処分となった。しかし、会社との和解が成立し、懲戒処分は取り消され、通常の退職として扱われることになった。

しかし、その組合員は退職を拒否した。そこで、労働組合がその組合員を除名処分としたことで、ユニオンショップ協定に基づいて、会社は組合員を解雇とした。

そこで、組合員は、労働組合による除名が無効であり、よって会社による解雇も無効であると主張した。

どのような判決が出たか(判決理由の意訳)

一審は、組合員のほうの勝訴となったが、二審は逆転で敗訴となった。

⇒ 最高裁判所は、組合員のほうを再び勝たせた(解雇無効)。

ユニオンショップ協定に基づいて、労組から除名された従業員に対する会社の解雇処分は、除名が有効に成立している場合にのみ認められるべきである。
なぜなら、会社は従業員を自由に解雇できるものではなく、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として認められる場合に限られるからだ。

もし、労組からの除名が無効であれば、ユニオンショップ協定を前提にしている限り、会社の解雇処分も合理性を欠いて社会通念上相当なものとして認めるわけにはいかない。よって、労組からの除名が過去に遡って無効となった以上、その従業員について解雇処分を維持することは、会社による権利の乱用であって、やはり無効とすべきである。

「日本食塩製造事件」に関するコメント

ユニオンショップ協定とは、会社にとってメリットがあるばかりではありません。労働組合からの除名によって、従業員を解雇しなければならなかったり、逆に除名の取り消しによって、解雇が無効になったりと、組合内部の事情によって振り回されるデメリットも伴うものです。
しかし、日本食塩製造事件の裁判例が物語るように、そのようなリスク要因は、ユニオンショップ協定を締結する時点において、事前に織り込んでおく必要があるといえます。