違法駐車をしているクルマにぶつかってしまった! どっちが悪い?

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都心部を中心に、違法駐車の取り締まりは厳しくなっています。特に東京23区内は、舗装された公道の99.9%以上が駐車禁止に指定されています。もはや、路上に駐めたら即アウトのはずですが、それでも路上に駐めたまま、クルマから離れて用件を済ませるドライバーは少なくありません。
道幅に余裕があり、それほど駐車取り締まりが厳しくない地方ですと、左側の1車線がほとんど大型トラックや営業車の駐車場(休憩場)のようになっている道もあります。

では、違法駐車のクルマに追突した場合、ぶつかったほうと、違法駐車していたほう、どちらの責任が重いのでしょうか?

ぶつかったほうは、前方をよく見ていなかったり、見通しが悪い場所で減速しなかった点で責任があります。しかし、違法駐車さえなければ起きなかった事故でもあります。違法駐車をしていた側のドライバーは責任を負わないのでしょうか。

そもそも、クルマを駐車中のドライバーは、クルマを運転中といえるのかどうかが問題となります。事故を起こして損害を与えたときに、相手方へ賠償義務を負うのは、自動車を「運行」している人に限られるからです。

自動車損害賠償保障法 第3条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。(以下略)

1 駐車は、自動車の「運行」なのか?

クルマにエンジンがかかっているかどうかを「運行」の基準とする定義もあります。その定義に沿うと(違法)駐車中のクルマは運行中とはいえず、そこへぶつかってきた他のクルマが壊れたり、ドライバーが負傷したりしても、損害賠償義務を負わないことになりそうです。
しかし、一般的には、自宅のガレージ(社用車であれば会社の駐車場)などの本拠から、クルマを発進させてから、戻ってきて格納されるまでの間が「運行」だとされています。
つまり、(違法)駐車中でクルマから離れていても、運転手は「運行」の最中ということになるのです。
一般的な「運行」という言葉のイメージとは離れますが、駐車も「運行」に含まれるとすれば、駐車中に起きた事故も賠償責任の対象になります。

では、どちらがより責任が重いのでしょう。
過失割合は、道路の状況(見通し)や、当時の交通量(車線変更でかわせたかどうか)、ぶつかってきたほうの運転状況(運転姿勢など)を総合的に考えて決定されますので、ケースバイケースです。
一般的には、明らかな違法駐車の場合、ドライバー側に、20~30%の過失割合がつくとされています。

たとえ、ぶつかった相手のクルマが違法駐車の状態でも、結局は「ぶつかったほうが悪い」という結論になってしまいます。夜間や見通しの悪い道の先が、たとえどのような危険な状況になっていても回避できるように、スピードを落として余裕のある運転を心がけるといいでしょう。

2 違法駐車のクルマを避けようとして、他のクルマとぶつかった場合

左車線を走っていると、突然、違法駐車状態のクルマがハザードも出さずに止まっているとしましょう。後続車がいれば急ブレーキをかけるのも危険なので、避けるとしたら、右にハンドルを切ることになります。
無理矢理に車線変更を試みれば、右車線を走行中の他車両と接触する危険があります。もし、片側1車線の道路であれば、向かって右側には対向車が近づいてきているかもしれず、正面衝突は致命的なリスクをともないます。
仮に、違法駐車のクルマを回避した結果、他のクルマと衝突した場合、車線を変えずに事故を回避することができない状況だったならば、交通事故という結果と、違法駐車という「運行」との間に「因果関係」が認められます。つまり、違法駐車をしていたドライバーにも損害賠償責任を負わせることになります。

大阪高等裁判所1981年8月28日判決

片側1車線の道路で、タクシーが乗客の要求に応じて、交差点の角で車両を左側に寄せて停止(※交差点の側端から5メートル以内は駐停車禁止区域なので、交通違反の状態)、客を降ろしていたところ、その後続車がタクシーを避けようとして、右へハンドルを切った。
すると、対向車線の原付と衝突し、原付の運転者が死亡したという事例。
裁判所は、タクシーの違法駐車が後続車の過失を誘発したとして、タクシー運転手にも責任の一端があることを認めた。

3 駐車中の自動車が(ブレーキが甘く)動き出してしまった

横浜地方裁判所 1970年10月26日判決

傾斜地でサイドブレーキを引いて自動車を駐めて休んでいると、サイドブレーキの利きが甘かったため、やがてブレーキが緩んで斜面を下りはじめ、車内の男女が自動車ごと海に転落して、ふたりとも死亡したという事例。
この場合も、ドライバーだった男性は自動車を「運行」中といえるため、運行の際の交通事故であることを理由に、男性の遺族が女性の遺族に損害賠償を支払うよう命じました。

4 高速道路で駐車中のクルマに追突してしまった

まず、高速道路は原則として、全線にわたって駐停車禁止です。
例外は以下の通りです。

  • パーキングエリア(PA)、サービスエリア(SA)など、駐車場が設けられている場所
  • 料金所で高速料金を支払うとき
  • 故障など、駐車することがやむをえない緊急の場合に、十分な幅がある路肩や路側帯に停め、三角表示板や発煙筒などで周囲に存在を知らせたとき
  • 高速バスがバス停で停まるとき

よって、高速道路上で駐車中のクルマへの追突事故が起きた場合、追突された側にも過失があるとされるケースが多いです。

名古屋地方裁判所 1975年1月29日判決

車体ボンネットの閉まりが甘く、高速道路を走行中に突然ボンネットが開き、前方が見えにくくなったため、追い越し車線で停止。ハザートランプを点けた以外には衝突を防ぐ措置をとらなかったところ、追突事故が発生。
 ⇒ 駐車ドライバーに65%の過失

京都地方裁判所 1981年4月27日判決

ほとんど照明のついていない深夜の高速道路上で、暗闇の中で駐車。エンジンを止めていたためにテールランプも点灯しておらず、三角表示板での標示もなし、しかも走行車線に車体の右半分がはみ出していた状況だったところへ、前方をよく見ていなかったトラックが追突。
 ⇒ 駐車ドライバーに40%の過失

5 「駐車」と「停車」のボーダーライン

一般道の中で停車が禁止されている区間は、一部にとどまりますが、駐車禁止に指定されている一般道はかなりの割合を占めますので、どこからが「駐車」でどこまでが「停車」なのかの境界が問題となります。
たとえ短時間だけクルマを停めた場合であっても、次のような状況なら、停車ではなく「駐車」となります。

運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態

ドライバーがクルマから離れている状況が「駐車」になるのは大原則です。

※以下は、たとえ停まっている車にドライバーが乗っていたり、車のすぐ近くにいるような状況でも「駐車」に該当する場合です。

客待ち

プライベートの送り迎えで、人を待っている場合も含みます。

荷待ち

車に積んで運ぶ荷物の準備ができるまでの間、待機している時間

5分を超える貨物の積みおろし

旅行や帰省の際など、車に積む荷物の量が多いときは要注意です。5分までなら「停車」扱いです。

故障

JAFなどの救援が到着するまでの間、ハザードランプや三角表示板、状況によっては発煙筒やドライバー自身の手信号などで、故障車の存在を知らせて追突を防止する対策をとる必要があります。

その他の理由による継続的な停止

たとえば、運転中に携帯電話がかかってきて、今すぐ路肩に停めて電話に出なければならない状況のときなどが該当しえます。短時間の通話で済めば基本的に「停車」となり、ほとんどはお目こぼしとなるでしょう。しかし「継続的」といえるほどの長電話なら、「駐車」扱いになる可能性があります。ご注意ください(とはいえ、運転しながら通話するよりは遥かに安全ですが……)。

6 標識が立っていなくても「駐車禁止」「駐停車禁止」となる区間

たとえ公道の上であっても、車両が止まっていれば明らかに交通や緊急活動の妨害になる場所や、見通しの悪くなる場所などは、駐車禁止や駐停車禁止の規制が一般的に設けられています。
知らず知らずに、その区間で人を降ろしたり乗せたりしていませんか。もし、その乗降の最中に追突事故が起きたら、あなたも法的責任の一端を問われることになりかねませんので、念のためご注意ください。

駐停車禁止(赤信号や踏切遮断での停止はできます)

  • 交差点の中と、その周辺の道路5メートル以内の区間
  • 横断歩道と、その前後5メートル以内の区間
  • 自転車横断帯と、その前後5メートル以内の区間
  • 踏切の中と、その側端から前後10メートル以内の区間
  • 鉄道の線路がある軌道の敷地
  • 路面電車の停留所(安全地帯)の向かって左側部分と、その端の前後10メートル以内の区間
  • 坂の頂上付近
  • 傾斜の急な坂やトンネル

駐車禁止

  • 人の乗り降り、貨物の積みおろしをするための道路外の施設(駅やバス停、配送センターなど)の出入口から3メートル以内の区間
  • 駐車場や車庫(自動車格納庫)の出入口から3メートル以内の区間
  • 道路工事区域の端から5メートル以内の区間
  • 消火栓から5メートル以内の区間
  • 火災報知器から1メートル以内の区間