75歳以上のドライバーの皆さん、交通違反を起こせば認知症検査となります

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日本では、先進国の中でも最も早く「超高齢化社会」に突入し、今や人口の8~9人にひとりが75歳以上となっています。
少子高齢化が進むにつれて、以前に比べれば、公道を運転する高齢の運転者が格段に増えてきました。
もちろん、個人差はありますが、加齢によって交通違反や交通事故を起こしやすくなります。高齢化によって認知能力や反射神経が低下し、道路状況に合わせた判断が鈍る傾向があるからです。

厚生労働省の研究によれば、日本全国の高齢者に占める認知症の有病率(推計)は、

  • 65歳~69歳 2.9%
  • 70歳~74歳 4.1%
  • 75歳~79歳 13.6%
  • 80歳~84歳 21.8%

となっており、75歳前後を境に急増していることがわかります。

また、75歳以上の高齢運転者による交通事故件数(2013年)は34,757件で、10年前に比べて約1.6倍に増加しているだけでなく、交通事故全体に占める割合も5.8%と約2.4倍に増加しています。
10万人当たり死亡事故件数(2013年)を年齢層別にみると、75歳以上の高齢運転者は10.8件と、75歳未満の者と比べ約2.5倍となっています。

今までも75歳以上の方が免許を更新する際に、認知機能検査が行われてきました。更新のときは「高齢者講習」と呼ばれるセミナーの前に行われるので、講習予備検査と呼ばれます。
(※高齢者講習は70歳以上の免許更新者が対象ですが、70~74歳の場合は、講習予備検査が省略されます)

しかし、これまでは、無事故無違反などの条件で、検査や医師診察が省略されるケースが多かったのですが、昨今その省略が疑問視されるようになりました。むしろ、本人のためにも、社会のためにも、運転を続けている高齢者の認知機能をは、、できるだけチェックしておくことが必要だとされたのです。

高齢者の皆さんにとって、認知機能の低下という事実を突きつけられるのは怖い。そのお気持ちはわかります。「まだまだ大丈夫」「運転できないと仕事にならない」と、自信や誇りを持って元気に運転したいところです。特に、高度経済成長期のモータリゼーションが華やかなりし時代に活躍してこられた世代ですから、他の世代と比べても、車の運転が大好きで思い入れの深い方々が多いのです。

ただ、認知能力が低下し、反射的な行動が遅れてしまう運転は、交通事故の危険と隣り合わせでもあります。取り返しの付かない悲劇を引き起こしてしまう前に、ご自分の運転能力を、改めて客観的に検査してみませんか。

特に、交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバーのうち、約4割に認知機能の低下が見られたと、警察庁は発表しています(2014年調べ)。現役ドライバーの認知症をどのように早期発見するかが課題となっているのです。

◆ 道路交通法 第103条  (免許の取消し、停止等)
1  免許(中略)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(略)
 一の二  認知症であることが判明したとき。

1 免許を取れる認知症 取れない認知症

「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」(警察庁交通局運転免許課長通知)によると、以下の通りです。

アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・血管性認知症・前頭側頭型認知症
⇒更新拒否、または取り消し

甲状腺機能低下症・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・頭部外傷後遺症など、その他の認知症

「認知症について回復の見込みがない」または「認知症について6月以内に回復する見込みがない」と、医師が診断した場合 ⇒ 更新拒否、または取り消し

「認知症について6月以内に回復する見込みがある」と、医師が診断した場合 ⇒ 、6か月の保留、または停止 ※医師の診断を踏まえて、6か月より短い期間にも設定可

認知機能の低下がみられ、今後認知症となるおそれがある場合
「軽度の認知機能の低下が認められる」「境界状態にある」「認知症の疑いがある」と、医師が診断した場合 ⇒ 6か月後に「臨時適性検査」を実施 ※なお、医師の診断結果を踏まえて、6か月より長い期間や短い期間を定めることも可。その場合、最長でも1年まで。

2 2017年春、「認知機能検査」を、さらに徹底へ

2017年3月12日から、新しい道路交通法がスタートします。
今まで通り、75歳以上の方は3年に1度の免許更新の際、認知機能検査を受けなければなりません。検査結果で「1分類:認知症の恐れ」「2分類:認知機能低下の恐れ」「3分類:問題なし」の3段階に分けられます。

今まで、「1分類」となった方は、過去に無事故無違反だった場合は、医師の診察が免除されていました。しかし、新道交法がスタートした後は、「1分類」の方について、医師の診察が義務づけられます。もし、診察により認知症と診断された場合は、免許取り消しあるいは免許停止となります。

今まで、「2分類」や「3分類」だった方は、たとえその後、交通違反をしても、反則金などの通常の処理があるだけで、そのまま次の免許更新まで認知機能検査を受ける必要はありませんでした。
しかし、新道交法がスタートすれば、75歳以上のドライバーが一定の交通違反をした場合、そのつど必ず認知症検査を受けなければなりません(臨時検査)

ただし、交通違反すべてが対象ではありませんので、ご安心ください。
ドライバーが、目の前の道路状況を把握しきれていないために起きると考えられる交通違反のみ、18種類を対象としているのです。
これは、2010~15年の5年間に発生した、約160万件にものぼる高齢ドライバーの交通違反を、警察庁が独自に分析し、「認知能力の低下と強い関連性のある交通違反」を18個ピックアップしているのです。

臨時の認知機能検査が義務づけられる18の交通違反

  • 一時不停止
  • 赤信号無視
  • 一方通行の道路を逆走
  • 歩道の通行などの通行区分違反
  • わき見や操作ミス
  • 踏切で一時停止しない
  • 黄線を超えて車線変更する
  • 指定通行区分違反(右折レーンから交差点直進など)
  • 横断歩道で一時停止せず、歩行者の横断を妨害
  • 横断歩道のない交差点で、歩行者の横断を妨害
  • 交差する優先道路の通行妨害
  • 優先車妨害(直進して近づいてくる対向車を無視して右折するなど)
  • 右左折でのウィンカー合図なし
  • 転回禁止場所でのUターン
  • 交差点で左折時に徐行しない
  • 徐行すべき場所で徐行しない違反
  • 環状交差点(ラウンドアバウト)内の車などの通行妨害
  • 環状交差点(ラウンドアバウト)を通行するときに徐行しない

速度超過や飲酒運転などは含まれていませんが、もちろん、違反しないようにしたいものです。
今までは、75歳以上のドライバーについて、定期的に(基本的に3年に1度)、免許更新時の検査を受けていれば十分でした。これからは、更新時の検査に加えて、一定の交通違反をやってしまったとき、随時、「臨時検査」も義務づけられるというわけです。

もし、認知機能検査の結果が前回よりも悪くなっている場合には、「高齢者講習」を受けなければなりません。
高齢者講習は、ビデオや機材などで高齢者に特有の運転上の注意点を復習していく講習であり、70歳以上の高齢者が免許を更新する場合は、必ず受講しなければなりません。75歳以上のドライバーは、今後はこの高齢者講習を、免許更新以外の機会にも受講しなければならない場合があるのです。

警察庁によれば、この高齢者講習には、以下の目的があるとしています。

  • 自分の運転能力の衰えを意識させる。
  • 認知機能が下がった人にとっては難しい課題をあえて設定する。危険行動を自分で回避できるようになるまで、同じ課題を何度も繰り返し行う。
  • 夜間や雨天など、難しい場面での運転は避けて無理をせず、スピードを落として走行するように強く促す。

3 講習予備検査(認知機能検査)の内容とは?

  • 今の年月日・曜日・時刻(時計は事前にしまいます)
  • イラストを見て、それを隠し、手がかりをヒントに思い出す
  • アナログ時計の文字盤を描き、指定された時刻の短針と長針を描く

この3種が、認知症の症状が現れやすい質問とされています。特にアルツハイマー病では、「今日が何曜日?」「今日は何月何日?」の質問に答えられなくなる見当識障害が、比較的初期に出るといわれます。また、アナログ時計も読めなくなる傾向にあります。
レビー小体型認知症は、家族の顔がわからない、自分を子どもと勘違いするなど、個人的に自分の置かれた状況が分からなくなるという「誤認妄想」が起きます。こういったテストでは測定しづらいかもしれません。

4 今回の改正に対する国民の意見

75歳以上のドライバーが一定の交通違反をしたなら、臨時の認知機能検査を義務づけるなどの制度を新設した今回の改正については、2015年1月、「改正試案」に対して広く一般に募集された「パブリックコメント」として、国民の意見が付されています。

交通違反者に対する、臨時の認知機能検査について

賛成の立場

認知症が原因となって重大な事故を起こす例が増加しており、75歳以上で特定の違反行為を行った場合は、直ちに臨時認知機能検査を受けさせるべきである。

条件付き賛成の立場

75歳以上といわず、70歳以上を認知機能検査の対象とすべきである。

反対の立場

若年性認知症もあるので、高齢者の認知症だけを対象とすべきでない。

認知機能低下のおそれがある運転者に対する、臨時の高齢者講習について

賛成の立場

必要な改正だと思うので、認知機能の低下のおそれがない者についての負担軽減、現行の講習時間短縮も併せて実施して欲しい。

条件付き賛成の立場

今後増加し続ける高齢運転者対策を効果的に行うために、認知機能のレベル、安全運転技能、運転ニーズに応じた講習を行うべきである。

反対の立場

認知機能が低下している者に対して講習しても効果が期待できず、複雑な制度になると講習の受講待ちが悪化する懸念がある。

5 まとめ

今回の新制度について、あなたは、どうお考えでしょうか?
世界に先駆けてのハイペースで超高齢化社会を迎える日本は、他のどの国の政策もヒントにすることができない、様々な「人類史上初の課題」を抱えています。これからは、官と民が協力し合いながら、試行錯誤を重ね、できるだけ多くの人が安全に運転を続けられる(運転を続けられなくなった方の尊厳も確保される)よりよい世の中を目指していかなければならないのでしょう。
むしろ、世界中の国々がこれから、日本の高齢化対策をヒントに学び、発展させていくものと思われます。