相談を待つのでなくて、掘り起こす。 / 浦崎 寛泰 弁護士


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掘り起こした課題に、ジャンルを問わず取り組む

浦崎 寛泰 弁護士

– 福祉と司法の連携で、他に取り組んでいらっしゃることはありますか。

ほかに力を入れているのは「風テラス(ふうてらす)」という取り組みです。風俗嬢の「風」ですね。

都内にあるデリヘル店の待機部屋を毎月訪問して、弁護士と福祉専門職がペアになって、風俗嬢からの相談に乗っています。これも、ホームレスや離島住人と同じで、法的サービスに対するニーズが埋もれていると思いますので、それを掘り起こすという活動です。

– 借金問題などありそうですね。

そうですね。親族間のトラブルなどを抱えている場合もあります。
一部の弁護士は、つい「デリヘルなんて辞めなさい」みたいな言い方をしがちなんですが、風俗嬢それぞれに事情があるわけですよ。

– そこで働きたくて働いているわけでない場合が大半ではないですか。

もちろん、やり甲斐を持って働いている人もいますが、精神疾患を抱えていてフルタイムで働けず、柔軟に働ける風俗店で、という場合もあるのです。どのような経緯にせよ、「辞めなさい」ではなく、今この瞬間に困っている悩み事に相談にのる。その結果、性風俗を続けるか辞めるかはその女性自身が決めることです。

債務整理など、法的に解決できるものもあれば、生活保護の申請といった行政サービスと連携する必要がある場合もあります。悩み事は多様ですが、こういう取り組みに没頭するほど、法律家の力だけでできることは、限界があると気づかされますね。福祉や医療との連携がなければ、満足な支援をできないと思っています。

– ご自分から問題を積極的に掘り起こしに行っているだけに、注力分野を絞り込むわけにはいかないわけですね。

そういうことです。こちらから働きかけて、掘り起こしに行って、浮かび上がってきた事件に対応し続けるというやり方です。

– お話を伺っていて思ったのですが、企業からの依頼は、基本的に入らないのですか。

福祉事業所からのご相談はたまにありますが、基本的には障害のあるご本人やご家族など、個人からのご相談がほとんどです。

– ということは、経営も安定しづらいかもしれませんが、いかがでしょうか。

成年後見人を何件かやらせていただいていますので、一定の収入はあります。あとは、この事務所も、NPOのオフィスの一部を間借りしているので、経費を抑えられています。経費を極力抑えることで、ガツガツ稼がなくても、やりたいことをやれる態勢にしています。

虐待は、悪意のある人が引き起こすとは限らない

– これから、どのような方針で弁護士として活動していかれるか、将来へ向けてのビジョンのようなものはありますか。

究極の理想をいえば、弁護士50人、社会福祉士50人の法律事務所を作りたいです。

– それは法律家と福祉が大いに連携する事務所になりそうですね。ただ、人件費のために、ある程度はガツガツ稼がなきゃいけない気もしますが(笑)

そうですね(笑)

– 50人とはいわずとも、今後、新たに弁護士を迎え入れるとしたら、どんな方がいいですか。

多様性を大事にする人ですね。いろんな立場、いろんな性格、いろんな価値観、いろんなハンディキャップを持つ人々が集まって、社会が出来上がっていることを前提に、その違いを自然に認め合えるような人です。

– 思い込みが激しいタイプといいますか、「こうでなきゃいけない」という押し出しが強い弁護士さんは困るわけですか。

突破力のある弁護士さんは、どこかで必要だと思うんですが、それでも価値観を共有できないと、一緒に仕事をするのは難しいかなと思います。

– ホームページに書いてあった「障害福祉サービス事業者向け法律アドバイザー」というのは、どういう取り組みですか。

福祉事業者に向けての顧問サービスのようなもので、一般的な顧問契約よりはかなり安い値段で行っています。

– 年間10万円ということですから、月あたり1万円切ってますね。

そこで稼ごうとしているわけではありません。法人単位ではなく事業所単位で、ちょっとしたアドバイスをします。そういう取り組みの中で、小さな福祉事業者さんや、そこの利用者さんとも定期的に接触できる。それがメリットだと考えています。

– やはり「掘り起こし」が主目的なんですね。

はい、そのきっかけづくりです。福祉事業所を利用される方のなかに、悪質な詐欺師に騙されたという方もいるかもしれないし、障害者虐待の問題もひそかに起きているかもしれません。そういう問題の解決に弁護士として少しでもお役に立てればと思います。より多くの福祉事業者の皆さんとつながっていきたいですね。

たとえば、障害者虐待というのは、必ずしも、悪い施設の悪い職員が入居者を殴りつけている、というわけではありません。

そうなんですか?

障害のある利用者がパニックを起こしたり、職員を襲ってきたりした場合に、対処の仕方がわからなかったり、スキルが足りないために、つい力で押え付けてしまうことで起きることが多いのです。

ですから、虐待をした職員を処罰するだけでは解決できないのです。福祉のプロの皆さんが、障害のある方への対応のスキルを上げることのほうが、ずっと大事です。支援に悩む職員を支える存在も必要です。そこに弁護士として第三者的に関われればいいなと思います。


困っている人々を助ける仕事だとはいえ、自ら声を上げられない人もいるだろうし、誰を頼っていいかわからない人もいる。そのために、浦崎弁護士は積極的に会いに行き、「問題を掘り起こす」と述べていた。さらに、福祉的なケアが必要とみられる被告人を担当する同業者をもサポートし、間接的に「問題の掘り起こし」に挑む。

もちろん、自ら相談に行ける方は、浦崎先生を訪ねて相談を持ちかけていただきたい。

PandA法律事務所

浦崎 寛泰 弁護士
PandA法律事務所

2004年 早稲田大学法学部 卒業
2005年 弁護士登録(東京弁護士会)
2014年 PandA法律事務所開設 代表弁護士(現任)
2015年 一般社団法人東京TSネット設立(代表理事)(現任)

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