「諫早湾干拓訴訟」の重要人物。愛する九州のため、法の力で尽くす。 / 吉野 隆二郎 弁護士


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福岡市、博多区役所のすぐ近くに、全国的な知名度も高い裁判も含めて、環境に関する法律問題に積極的に取り組む法律事務所がある。

先輩弁護士から「吉野君は、お金にならないほうへ行ってしまったね」と言われ、苦笑された過去もあるらしいが、それでも、環境問題への取り組みは、人々の幸せな暮らしに直結するとの信念を心に秘める。
今回は、よしの法律事務所代表の、吉野 隆二郎先生にお話を伺った。

有明海・諫早湾干拓訴訟に深く関わる弁護士

– 吉野先生の弁護士としての注力分野は、どういったところになるのでしょう。

注力しているのは環境問題なのですが、これで食っているわけではありません(笑) とにかく、地域の皆さんからご相談やご依頼がある法律問題に、法律家として対応し続けるだけです。

– 法律家として対応なさった中で、今までで印象に残っている事件はありますか。

これは現在進行中なのですが、特に九州では連日のようにマスコミを賑わせている「諫早湾干拓訴訟」ですね。この弁護団に加わっています。
私が弁護士になって4年目に加わりまして、それからずっと関わっています。

– 国の税金が、日々垂れ流しになっている事件ですね。

はい、国が敗訴しているのに、その判決を国が守らないんですね。福岡高裁で判決が確定したのが、2010年の12月で、それから3年以内に堤防の排水門を開門(海水を堤防の中に入れて海水交換すること)しなければならないのに、未だに開かないということで、まだ問題が続いているわけです(なお、このインタビュー後、2017年4月17日、長崎地裁で開門差し止めが認められる判決が出ている。干拓地の営農者側の勝訴、漁業者側敗訴)。

間接強制がかけられて、開門しない限り、国は1日あたり90万円の支払い義務を負い続けています。昨年末までで7億円以上が国から支払われました。

– その7億円はどうなるんですか。

もしかすると、国が提訴した請求異議訴訟で敗訴すれば返還しなければならないかもしれないんですよね。

– 使っちゃいけないんですね。

使えないです。現在行われている諫早湾干拓訴訟の裁判に関する多くの手続の連絡先の窓口は、私になっています。

– 事務局長でいらっしゃるのですか。

事務局長ではないのですが、他の弁護団で事務局長がやるような仕事をやっている立場です。

– そもそも、なぜ国は判決に従わないのでしょうか。

農水官僚が開門したくないんでしょうね。

– 開門しないことで、干拓地は確保できますが、一方で漁業被害が生じているのも無視できないわけですよね。

とにかく、農水官僚が拒んでいるという、噂は漏れ聞こえています(笑) そして、諫早湾干拓に関わってくださる海洋関係の学者さんが、とても良心的で自らも調査研究をされている、その道の権威みたいな方々が揃っているので、その点は心強いし、恵まれているなと思っています。

– なぜ、そのようないい学者さんが揃っているのですか。

かつての諫早湾の干潟の重要性をご存じだった研究者が多数いらっしゃったからだと思います。かつて、有明海の環境をめぐる裁判は、ムツゴロウ訴訟など、他にもいくつかありましたが、東京で公害等調整委員会の手続(原因裁定)を行う中で、弁護団も徐々に一本化され、弁護団を理論的に支えていただける海洋系の様々な学者と知り合う機会があったのです。

私も、その手続の事務局長をして、潮の流れなどのメカニズムについて、それなりに勉強して書面のとりまとめなどをしたものですから、より海洋学者も信用してくれて、研究室にお話しを伺いに行くと、いろいろと新しい知見を教えていただけるようになり、私の理解も深まっていったという経緯があります。