「愛・良心・正義・正直・勇気」を大切にする会社が成長する。 / 湊 信明 弁護士


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裁判所からも程近いオフィス街である東京・有楽町に、200社近い顧問先企業から信頼を集める法律事務所がある。
今回は、湊総合法律事務所湊 信明先生に、インタビュー形式でお話を伺った。企業の経営者にとってコンプライアンスとは、単に法律の条文を守る前に、愛・良心・正義・正直・勇気の心で経営にあたることが大事であると語る、その意義についても詳しく話していただいた。

司法試験受験生時代の人脈が、今も生きている

– 湊先生が、弁護士になろうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

父親が医療事故で亡くなったことですね。正確には、医療事故であろうと強く疑われる状況下で亡くなったということです。

– 大変な状況があったのですね。いつ頃の話なのでしょうか。

中学2年生です。

– このときに、弁護士のお世話になったのでしょうか。

いえ、周りに弁護士もいませんし、40年前の出来事ですから、医師のミスを裁判に訴えるとか、そういう状況でもなかったんですね。

ただ、『白い巨塔』のテレビドラマで、あれも医療事故の話ですが、財前医師の病院に対して弁護士が証拠保全をかけるなどの対応をしているのを観て、「これができていれば、父の医療事故も立証できたのかもしれない。何とかなったかもしれない」という気持ちになったんです。

法律の力は凄いものだなと思いまして、弁護士を目指してみたいなと考えるようになりました。しかも、ペン1本で権力に対峙できることに憧れがありました。

– 中央大学卒業から司法試験合格まで間がありますが、これは、ずっと受験をなさっていた期間ですか。

そうですね。アルバイトをしながらですが、受験を続けていました。家庭教師やコンビニでバイトしたり、スイミングスクールで教えたり、そういった仕事をしていました。

– この頃の経験が、今の業務に活かされているということはありますか。

そうですね。この頃に知り合った人たちを通じて、弁護士になってから現在に至るまで、本当にたくさんの仕事をご紹介いただいております。ですから、司法試験にすぐに合格するよりは、結果としてよかったと思います。

大きな事件を単独で解決し、弁護士としての自信を付ける

– 弁護士になりたての頃は、どういう弁護士になろうと考えていらっしゃいましたか。

やはり、父のことがありましたので、医療問題からは離れたくないと思っていました。ただ、医療問題に関して弁護士は、患者側に就く場合と病院側に就く場合とで分かれることが多いです。でも、私としては、医療事故で酷い目に遭っている方がいらっしゃれば、サポートして差し上げたいですし、一方で、病院側に立って、その経営の在り方そのものを変えるためのサポートをすることも重要だと考えています。

– 医療事故が起きない態勢づくりでしょうか。

それも一つです。たとえば、患者様やそのご家族への説明義務に関しても、医師や病院は十分に行っていると思っても、患者サイドからすればまったく足りていないということはよくあります。私自身、父が亡くなったときは医師からわかりやすい説明は一切してもらえませんでした。今でも説明責任を十全に果たしている医療機関は数少ないと思います。そういうことの是正のために病院側に立って弁護士が動くことは重要だと思います。

– 手術をするならするで、リスクの大きさなど、その事前説明をしっかり行うということでしょうか。

そうですね。そして、患者の訴え、痛みや悩みに耳を傾けることも、医療事故を未然に防ぐために必要です。説明義務を果たすためには、まず患者の話を傾聴し、受け入れて痛みに共感する、徐々に段階を踏んでいくカウンセリングの基本が必要です。そうして医師と患者の間に信頼関係を築く努力をしなければなりません。

– 弁護士を目指した出発点は、医療事故と強く疑われるご家族の不幸がきっかけとのことですが、今では医療機関に限らず、企業法務一般に職域を広げていらっしゃるわけですね。

そうですね。中小企業の顧問弁護士として、さまざまな事件を解決したり、課題について助言をすることをライフワークとしています。

– 今まで、約20年間の弁護士としてのキャリアを重ねてこられて、思い出に残っている案件などはありますか。

ある宗教法人の所有していた土地を、とある中小企業が購入して、10億円を超える代金も支払ったのですが、その宗教法人は実質的に活動しておらず、反社勢力など様々な思惑を持った人々が関わり、その法人の代表役員の地位をめぐって紛争状態にあったという案件がありました。

土地購入後に、実は、購入時の代表役員は正規の代表者ではなかったとして、後になって売買契約は無効であるいうことになって、契約トラブルに発展しました。それでこの会社も大変な目に遭ったんですね。相手方から嫌がらせを受けて、取引先銀行も手を引いてしまったので、資金繰りにも窮していました。

その相談を受けまして、私はその頃、ひとりで法律事務所を運営していた頃だったので、対応できた弁護士は私ひとりでした。私の事務所にも嫌がらせはありましたし、大変でしたが、無事に解決まで至ることができました。

– それは凄い話ですね。怖くなかったですか。

怖かったですけど、仕事ですからね。コミュニケーションを取るというレベルではなかったので、嫌がらせをかいくぐりながら調整をしなければなりませんでしたし、依頼者もノンバンクから高利で融資を受けて凌いでいたので、解決に時間をかけるわけにいきません。早期の解決も求められました。

– 裁判などにすると、何年もかかってしまいますね。

そうですね。結局、1年かからないぐらいの期間で収めました。そのとき、弁護士になって間もないころでしたが、あの案件は、弁護士としての自信を付けた転換点であり、今の事務所を支える礎になっていると思います。