難民認定の申請や国外退去強制への異議など、「外国人の人権」問題に注力 / 児玉 晃一 弁護士


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退去強制処分により、未成年の息子が母親と生き別れ

児玉 晃一 弁護士

– 日本は、難民認定がほとんど通らない国として、国際的にも知られてしまっています。どこに問題があるのでしょうか。

自国へ帰れなくなった難民の保護を保障する難民条約(国連・難民の地位に関する条約)を、日本政府は遵守する気がないのです。

「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」というのが中心的な要件で、世界中でさまざまな判例が蓄積されていますが、日本の裁判所の判断や入管の運用は、国際的な基準を無視して、独自の厳格な基準を作り、ほとんどの難民認定の申請を排斥しているのです。隣の韓国の最高裁は「国際的な基準に則るのが当然である」と述べているんですけどね。

– どうして、そのように運用の差が出てしまっているのでしょう。

行政の判断を追認している日本の司法がだらしないのだと思います。他の国でも、入管行政はできるだけ難民を入れたくないのが本音でしょうが、司法判断がしっかりと基本的人権に配慮する判断をくだしているから、難民が保護されるようになっているのでしょう。

– 行政に追随したがる日本の裁判所の姿勢は、難民認定の分野に限ったことではないでしょうけどね。そのほかには、どのような外国人事件を扱っていらっしゃいますか。

国外退去強制の手続きに異議を申し立てる業務なども行います。
有名な事件で、タイ国籍で生まれたときから山梨の甲府に住んでいるウティナンくんという高校生がいるのですが、母親は人身売買で日本に連れてこられて、形式的には不法滞在ということになっていたので、親子で東京入管に在留特別許可を求めたのですが、逆に退去強制処分となったのです。

それで裁判に訴えました。高校生たちがバスで東京地裁まで裁判を傍聴しに来て、傍聴席を30人ぐらいで埋め尽くし、裁判官とのやりとりで、「これはいけるかな」という手ごたえもあったのですが、判決直前に裁判官が異動で替わってしまいまして、ひどい敗訴判決をもらいました。

– ウティナンくんは、今どうしているのですか

母親が一審判決敗訴で、タイに戻ってしまったのですが、彼は争い続けていました。ただ、高裁でも訴えは認められず、今は入管に再審を申請する手続きをしています。退去強制処分が出た当時よりも、さらに日本との結びつきが強固になっていると主張しているところです。

– 時間経過によって事情が変わったので、審査をやり直してほしいということですね。それにしても厳しいですね。

というのも、裁判所の判決理由で、母親が不法就労者である以上、母子がともに日本で暮らすわけにはいかないけれども、地域で受け入れる態勢が整っていれば、子どもの在留特別許可については再検討される余地があると、私に言わせれば余計なことを書いていたんです。

– それも難しい問題ですね。退去強制手続きが出ると、全件で身柄を拘束されるんですね。

ええ、日本の入管による「全件収容主義」は、国際法違反だと考えています。ただ、弁護士の間でもこの問題は知られていませんし、日弁連でも問題意識が共有されていないと感じています。

この20年間で改善された、外国人収容の処遇

– 外国人の人権問題は、法曹界でも関心が薄いのでしょうか。

たとえば、刑事事件の弁護であれば、被疑者の身柄の釈放を目指して、一生懸命に取り組む弁護士がいます。準抗告なども含めて、必須の弁護活動と認識されています。国選弁護人であれば、法テラスから報酬が出ます。刑事弁護については、日弁連はとても力を入れて、費用もかけて取り組んでいるんですよ。

一方で、入管で身柄拘束されている外国人の場合、弁護士は仮放免申請といって、刑事手続きでいう保釈申請のようなことを行います。最も現実的な身柄解放手段なのですが、これをやっても、一銭もお金にならない場合もあるのです。

– この場合、国選弁護人ではないのですか。それはまずいですね。

入管に仮放免を申請して結論が出るまで2~3カ月かかりますし、いつ結論が出るのか問い合わせても、絶対に教えてくれません。時間がかかるんです。

– その間も、外国人の身柄はずっと拘束されたままなんですね。

在留特別許可の裁判や難民申請の事案になれば、日弁連の委託援助という、弁護士から集めた会費の一部を積み立てているものがあるので、そこから10万円ぐらいの費用が出ます。ただ、身柄の釈放単体では、出してもらえないことが多いと聞いています。

– 日弁連にも、もう少し重視していただきたいですね。外国人事件に一生懸命取り組むことは、長い目で見て国益にも繋がると思うんですが。

刑事弁護と比べると、一段も二段も低く見られている感覚はあります。もちろん、日弁連も限られた予算の中で捻出しているのでしょうが、「原則として出さない」という運用はどうかと思います。

– この問題に20年以上取り組んでいらっしゃるのでしょうが、改善の兆しのようなものはありますか。

少なくとも、子どもが収容されることはなくなりました。
私が弁護士2年目で担当した事件ですと、小学6年生と3年生の子ども2人が、私の目の前で収容されていきました。

– それはショックが大きいでしょうね。

また、難民申請について、上陸から60日で申請期限が切れるという法律の規定も、法改正によってなくなりました。

入管の収容所の中での処遇も、昔に比べれば改善されています。昔が酷すぎたんですけどね。夏にシャワーが週3回しか浴びられないし、クーラーもほとんど効いてなくて蒸し風呂状態で、窓も開けられないんです。毛布やシーツには誰かの長い髪の毛がひっついていたりですね。

– 洗わずに使い回しなんでしょうね。

雑居房にあるトイレは、腰ぐらいの高さの板で仕切られているだけでした。しゃがめば、他の人からは見えないのですが、臭いと音は筒抜けの状態です。

その雑居房に小学6年生の女の子が入れられたりしていたんですから、屈辱的ですよね。

– 何も悪いことをしてないのに、そういう運用なんですね。それが20年以上前ですか。

他にも、入管職員によるセクハラやレイプがあったという報告もあります。拘置所とか刑務所では、そこまでの被害はほとんど聞かない話ですが、収容されている外国人に対してはしばしばあったようです。

中には売春婦だったりオーバーステイのホステスさんなど、若い女性も収容されていますからね。セクハラなどの被害に遭っても、すぐに強制送還されちゃいますから、一部の職員は好き勝手にできる環境だったのだと思います。