難民認定の申請や国外退去強制への異議など、「外国人の人権」問題に注力 / 児玉 晃一 弁護士


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仕事が減って、仮放免中の外国人を尾行監視する入管職員

児玉 晃一 弁護士

– 他に、外国人の処遇をめぐる日本国内の問題はありますか。

入管が収容手続きを、明らかに本来の制度趣旨とは違う目的で使っていることもあります。刑務所から刑期を終えたばかりの外国人なのに、そのまま外に出してしまえば、また犯罪を犯すんじゃないかと入管が独自に判断して、仮放免を出さないということもあります。

– 入管の判断で勝手に、刑期の延長みたいなことをやっているとすれば、越権行為ですね。

おっしゃるとおりで、裁判所が決めた刑期を終えれば、処罰はそれで終わりのはずなんですが、予防拘禁のような意味合いで身柄拘束を続けるのです。

ただ、外国人なので、出所した後の生活は実際に困るのは確かですね。生活保護は出ませんし、働かなければ食べていけません。それなのに、現在は仮放免の条件として「就労禁止」が必ず付けられます。従来は仮放免中の外国人が仕事に就いていても入管は黙認していたんですよ。しかし、2015年頃から、就労禁止の条件を書類に明記するようになって、厳格な運用になり、就労が見つかったことを理由に再収容を行ったりもしています。本当に就労を禁止されると、何の収入のあてもなく、実際問題として生きていけません。

仮放免中の外国人が働くことを禁じている法令はないので、私たちは「働いても大丈夫だよ」とは告げているんですけどね。

– なぜ、このように運用が変化したのでしょうか。

入管の職員がやるべき仕事が減っているからだと思います。以前はオーバーステイの外国人が年間30万人ぐらいいたのが、現在は5万人ほどに減っています。仕事が少なく、手持ち無沙汰なのかもしれません。仮放免中の外国人を尾行したり、自宅に調査に行ったり、近隣の聞き込みをするなどして、今までは見逃していたはずの就労について、摘発を始めたのです。

– オーバーステイの外国人が減ったのは、どういう理由ですか。

オーバーステイについて母国への退去強制を徹底したり、一方で日本での在留特別許可が出やすくなったりして、それでオーバーステイに該当する人数が減ったという事情があります。

– もはや、入管の改革はできないのでしょうか。

難しいですが、いろいろと取り組んでいます。
法務省に出入国管理政策懇談会というものがあって、改革案が話し合われるわけですが、メンバーの中に弁護士は1人だけで、あとはみんな御用学者みたいな人たちです。これでは多勢に無勢ですよね。

– 人選の段階で、結論は決まっているんですね。

かつて、民主党が政権を取る前のころですが、難民認定を法務大臣の判断で行うというのは中立的でないので、行政から独立して判断する機関を作るべきではないかと提案して、そのための法案作成にも関わらせてもらいました。2009年に民主党が政権を取ったものですから、「これは実現に向けて動き出すんじゃないか」と思ったんです。

しかし、その政権はすぐに終わって、何も進みませんでした。

語学力よりも、問題意識と気合いが必須

児玉 晃一 弁護士

– 国際的に、日本政府へ注意喚起してもらうのがいいでしょうか。

国連には、条約違反の状態が司法で改善されなかった場合に、通報を受け付ける制度があります。最高裁の判断が間違っていることを、国連の場でジャッジしてもらうことができるのです。

そのジャッジに法的拘束力まではないのですが、最高裁にとっては国際的にみっともない状態をさらされることは確かなので、条約に沿った司法判断への変更も期待されます。

ただ、日本はその選択議定書を批准していないのです。千葉景子さんが法務大臣をしていた頃には、その批准を目指すことも目標に掲げてたはずなんですけどね。

今の日本での外国人の処遇をめぐる状況を劇的に改善させるには、選択議定書の批准しかないと考えていますが、遅々として進みません。やはり私は弁護士なので、司法の場でやっていくしかないのかなと改めて思います。裁判所がしっかりと、条約や法令に沿って判断してくれるのが一番だと考えています。

– このような外国人問題に携わる弁護士の、後進の指導はなさっているのですか。

はい、うちの事務所にもいますし、弁護団の中でも事件を通じて後輩の指導を行ったりしています。また、外国人ローヤリングネットワークでお互いに情報交換をしたり、「児玉道場」という塾を開催したり、ハマ―スミスの誓いという、外国人の全件収容主義と戦う弁護士の会を立ち上げて、勉強会も開いています。

– 児玉先生が弁護士になられたばかりのころ、外国人問題に関わる弁護士は稀少だったんですよね。

なにしろお金にならない分野ですので、法科大学院の奨学金の返済まで抱えている若手弁護士が、この問題に時間と労力を割けるのかという課題もあります。よほど問題意識が強くて、気合いが入っている人でないと無理かもしれません。

また、刑事弁護と違って、入国管理局は東京・名古屋・大阪など、大都市で事件が集中していますので、外国人問題に取り組む弁護士も特定の地域に偏在しがちです。それでも徐々に、後進も増えてきてはいます。

– 事件そのものは、たくさんあるわけですよね。

たくさんあります。中には、それなりに裕福な外国人がオーバーステイしている場合もありますし、企業のスポンサーが付いている事件を受けたりもします。しかし、ほとんどはお金を持ってない。難民であればなおさらです。

ですから、現在の委託援助を前提に弁護士が外国人問題で儲けようと思ったら、悪徳弁護士にならなきゃいけません。たくさん受任して、手を抜くしかないんですよ。

– 特に語学に自信のある弁護士には、外国人問題に積極的に取り組んでもらいたいですね。

語学力は、あるに超したことはありませんが、必須ではありません。通訳を通せば大丈夫です。


にわかには信じがたいお話も少なくなかった。しかし、これが憲法で国際協調主義を謳う日本の現状でもある。甲府のタイ人高校生のように、普段から日本のコミュニケティに溶け込んでいれば、支援の輪が広がりうるが、この社会で孤立している外国人にとっては難しい状況なのかもしれない。

弁護士は誰の味方にでもなれるぶん、具体的な力を持たない人のために手を貸して働くのが本分だといわれる。法律問題で辛い状況に置かれた外国人やその知り合い、また、外国人の法律問題に取り組む志のある弁護士は、マイルストーン総合法律事務所を訪ねていただきたい。

マイルストーン総合法律事務所

児玉 晃一 弁護士
マイルストーン総合法律事務所

1989年 早稲田大学法学部 卒業
1994年 弁護士登録(東京弁護士会)
1994年〜1999年 吉岡桂輔法律事務所入所
1999年〜2002年 児玉晃一法律事務所開設
2002年〜2007年 東京パブリック法律事務所参画
2007年〜2009年 りべる総合法律事務所
2009年〜 マイルストーン総合法律事務所開設

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