社会に隠れた「障がい者の法律問題」を救い出す、全盲の法律実務家 / 大胡田 誠 弁護士


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障がい者を見かけて、手を貸すのはお節介なのか?

大胡田 誠 弁護士

– 近ごろ、障害者差別解消法が施行されましたね。

私も注目して期待をしている法律でして、障害者に対して差別的な取り扱いをしてはならないし、合理的な配慮、手伝いもしなければならないと定めています。

– 今までは道徳の問題とされてきた話でしょうね。ただ、公的機関では法的義務として課されるけれども、民間企業では努力義務にとどまるとのことですね。

たしかにそれは不十分な点ですが、努力義務を課す法律ができただけでも、一歩前進といえます。
これは障害者差別解消法ができる前の事件ですが、あるネットカフェの常連さんで精神障害のある人がいまして、ブースの中に精神障害福祉手帳を置き忘れて、手帳は無事に手元に戻ってきたんですが、それ以来、そのネットカフェを出入り禁止になってしまったのです。

– そうなんですか。手帳の名前を控えてたんでしょうね。常連だから顔も覚えられていたでしょうし。

裁判を起こして、無事に主張は通ったのですが、まだ日本社会は障害者に冷たいところがあります。

– 最近も、車いすの方で、飛行機の搭乗拒否をされたという事件がありましたね。

そうです。「歩けないお客様は乗れません」と言われ、タラップを手で登ったということですね。そういった事態が、法律ができたことをきっかけになくなるよう願いますし、弁護士としても、この法律を使いこなせるようになる必要があると思います。

裁判が積み重なっていけば、改善すべき点もおのずと明らかになっていくはずです。

– これは大胡田先生にお尋ねしたかったんですが、たとえば街中で障害者を見かけたとき、どこまでサポートしていいものか躊躇することがあります。かえって失礼に当たることもあるでしょうし、どこからが余計なお節介なのかなと思います。

答えはただひとつで、「その本人に聞いてみる」です。

– そうなんですね。

人それぞれですので、困っていそうな障害者を見かけたら、「何かお手伝いすることはありますか」と尋ねてみるといいです。

「いえ、大丈夫です」「慣れてるからいいですよ」と、断られることもあるでしょうけど、それでいいんです。

– 断られると、若干悲しい気持ちにはなりますね(笑)

障がい者に限らず、どんな人でも自分ひとりだけで何だってできるわけではありません。一方で、障がい者だからといって、何もできないわけではないです。できることは必ずある。それでも、まずは関心を持つことが大切です。

できる範囲で、みんながちょっとずつ支え合うだけで、世の中が住みよく、暮らしやすくなると思います。そして、障害者差別解消法は、日本社会が住みよくなる突破口になりうると考えています。

– この弁護士という資格を通じて、将来はどのような取り組みを実行していかれるつもりですか。

あと数年先になるかもしれませんが、アメリカのロースクールに留学したいという希望があります。日本における障害者差別解消法のもとになった法律が、アメリカでは1990年に成立しています。

– その点では、日本よりも25年以上先を行っているんですね。

もちろん、この法律によってもうまくいかなかった負の面もあるでしょうから、それも含めて現地で感じて、研究して、日本に持ち帰りたいです。

さらには、自分自身が楽しく、充実して仕事を続けていく、そのこと自体も目標です。失明したり、他の障がいを持っている人々が、少しでも希望や勇気を持ってくれたらなと。ちょっと口幅ったい言い方になりますけどね(笑)

– かつて、中学時代の大胡田先生が、竹下先生のことを知って、弁護士を目指したようにですね。

そうです。そのときに竹下先生から、私は希望をもらいました。今度は私が、次の誰かにバトンを渡したいなと思うんですね。

どうやら、盲目の弁護士がいて、仕事を頑張っていて、お金もそこそこ稼いでいるらしいと(笑) その姿が、希望を失っている方々の励みになればいいと思います。

– もう既に、励まされている方は大勢いらっしゃるのではないですか。

そうだといいですね。


人間は、外界の情報の9割以上を、視覚から得ているといわれる。その視覚を奪われた大胡田少年がかつて覚えたであろう絶望感は、想像を超越するものがある。しかし、その絶望の淵から救ったのは、日本初の全盲弁護士だった。様々な困難を乗り越えて、今はその憧れの先輩のもとで働くことができているのは、幸せな運命と言うほかないだろう。

障害の有無にかかわらず、法律問題を抱える人々が大胡田弁護士を頼るのは、困難を撥ねのける精神と幸運に惹かれてのことかもしれない。

弁護士法人つくし総合法律事務所東京事務所

大胡田 誠 弁護士
弁護士法人つくし総合法律事務所東京事務所

2007年 弁護士登録(第一東京弁護士会所属)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業
同大大学院法務研究科修了

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