「事故」と名が付く法律問題は、ほとんど経験しています。 / 佐々木 龍太 弁護士


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決して「弁が立つ」タイプの弁護士ではない。むしろ、黙々と法律紛争に取り組む「職人気質」と形容すべきだろう。
それでいて、静かに事務所にこもり続けるばかりでもなく「積極的に遠くへ出張する」というフットワークの軽さも見せる、独特な雰囲気をまとった佐々木龍太弁護士(成子坂上佐々木法律事務所)にお話を伺った。

現場ひとすじで業務経験を積み上げた20年間

– 独立をなさったて間もないのですね。

そうです。昨年、2016年に事務所を立ち上げたばかりなのです。

それまでいた事務所は、交通事故に関する損害賠償を専門にしているといっても過言でないところでした。

– 保険会社からの依頼を受けるわけですか。

基本的にそうですが、しばしば交通事故の被害者からの依頼を受けることもありました。
さらに、交通事故以外の事故も多く担当してます。たとえば、マンションの部屋の水漏れ事故。ひとたび起きれば莫大な損害になってしまいます。

– ええ、そう聞きますね。

それと、スポーツ事故の案件もあります。たとえば、記憶に強く残っていますのが、スキー場で滑っていた人が転倒して、リフトの支柱に激突し、頸髄を損傷して、首から下がほぼ麻痺して動かなくなったという事故、そういう事故の裁判も受け持つことがありました。

– それでスキー場を訴えるわけですか。

施設側が提訴されたケースですね。スノーボードの事故もあります。滑っている人同士の衝突事故が多くてですね、基本的には、上から滑ってきた人に衝突の責任があるとされています。

– たしか、そういう判例がありましたね。最高裁の。

はい、判例が出ています。あの判例ができてから、事故処理がだいぶやりやすくなった面があります。あるいは、サーファー同士の衝突事故もあります。

– 衝突するものなんですか、海の上で。

波が高くなりますと、波の向こう側が見えなくなってしまいますので、死角ができるわけですね。

他にも、電車が出発しようする際、閉まるドアに挟まれてしまった事故もあります。その場合は車掌さんに責任があるとか。バスの運転手が運行中に急ブレーキを掛けてしまい、乗客が転倒して負傷したとか、ひとことに「事故」といっても、いろんな種類があるのです。

過去約20年間の弁護士業務の中で、ありとあらゆる事故の案件を経験しました。こう言っちゃ何ですが、担当した事件の数だけは多いんですよね。

医療事故だけでなく、整骨院やマッサージ師の事故、さらに調剤事故というものもやりました。医師は正しく処方箋を出したんだけれども、薬剤師が誤った分量の薬を患者さんに出してしまったと。

– たとえば、数値の小数点に気づかなければ、10倍の間違いもありえますよね。危険ですね。

交通事故でも、死亡事故の死因が問題になったり、後遺症とされている症状に事故との因果関係があるのかが問題となったり…… 医学的な判断を含む交通事故での争いが、前に勤めていた事務所でほとんど私の担当になりまして、必然的に業務経験を積むことができました。本来、理科は苦手なんですが(笑)

刑事事件は好きでない。そのぶん民事に注力

– 医療知識は、独学で習得なさったのですか。

独学もしていますし、高校時代の同級生で医者になっている友人がいるので、そのつど教えてもらったりすることもあります。

– 他にも担当した事故・事件は多いのでしょうね。

ほぼあらゆる種類の民事事件を経験しています。

事故の他にも、男女問題とか、借地権とか、自己破産とか、労働審判など、いろいろと担当しました。企業法務もそこそこ経験があります。契約書のチェックもやりましたし。

裁判所での手続も、通常訴訟・手形訴訟・少額訴訟や、控訴・上告・即時抗告、金銭支払や建物明渡しの強制執行、仮差押えや仮処分、証拠保全や文書提出命令、破産や個人再生なども行いました。

中には、裁判官もおそらく初めて直面するような、判例も出ていないし文献すらもない、想定外の問題に直面し、一緒に考えて議論を交わしたこともありました。

– すごい経験値を蓄えていらっしゃるのですね。20年も在籍した前の事務所は、相当働きやすかったのでしょうか。

そうですね。居心地はよかったです。処理しなきゃいけない事件量は半端じゃなかったですが(笑)

– 刑事事件は、あんまり担当なさらないですか。

はい、個人的には苦手です……。学生のときから刑事法はあまり興味が湧かなかったですし(笑) 民事のほうが好きですし、得意です。

– 本音で語ってくださって、有難うございます(笑) 民事事件は、何が興味深いのでしょうね。

刑事事件ですと、過去に起きた事件を問題にして、一連の流れが法律上の刑事手続きで決まっていて、裁判所で判決が出たら、それで一区切りですよね。

民事事件は、過去に起こった事件を掘り返すというより、今ある法律関係がこれからも継続していくことを重視して、常に状況が変化しうるダイナミックな側面が面白いと思います。ただ、交通事故などは、刑事事件に近い性格があると思いますが。

刑事事件も、判決が出た後の被告人の更生など、刑事政策を重視すれば動的な側面があると思いますが、私としては民事のほうが面白いです。