犯罪被害者のために。非行少年のために。 / 今西 隆彦 弁護士

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新宿まで小田急線で一本、特急ロマンスカーの一部を除いて、すべての電車が停まる相模大野駅は、いわば神奈川県の重要な玄関口のひとつであり、発展も著しい。
その街で開業し、犯罪被害者の保護や少年事件を中心に取り組む今西 隆彦 先生(今西法律事務所)にお話を伺った。
かつては検察官志望で「刑事弁護なんか、絶対やらない」と決心していた今西弁護士は、なぜ少年事件にハマりこんでしまったのだろうか。

犯罪被害者と弁護士の接し方

– 犯罪被害者の法律問題に、積極的に取り組まれているのは、何かきっかけがあったのですか。

わたしは昔、検事を目指していて、もともと犯罪被害者のために役に立ちたいという気持ちがあったんです。

それと、立法もやってみたかったんですね。検事の中には法務省に出向して、刑事関連法の法案を作成する人もいますので。

– おお、そちらも目指していたんですか!

ですが、司法試験に受かり、司法研修所に行っても、残念ながら推薦をもらえなかったんですよね。教官に二回試験も危ぶまれる出来の良くない生徒だったものですから……(笑)それで、弁護士になったという経緯があります。

でも、弁護士だって、代理人として犯罪被害者のために働けることを知って、「そうしよう」と思ったんです。

弁護士になってすぐ、横浜弁護士会(現 神奈川県弁護士会)犯罪被害者支援委員会に出席させてもらって、当時委員長をなさっていた武内 大徳 先生にお願いをしまして、しばらくして正式に入れていただきました。

– どういう種類の犯罪被害が、案件として多いのでしょうか。

性犯罪が多いです。被害者の方はやはり同性である女性弁護士を希望する方が多いようです。いったん男性弁護士に就いてもらっても「やっぱり女性でお願いします」という場合もあると聞いています。

ただ、私の場合は「代えてください」と言われたことは今までないんです。

– それはどうしてですか。

どうしてなんでしょうね。「今西先生は、中性的だからじゃないの?」って、ある人に言われたことがありますけど(笑)

– いえいえ、声やしゃべり方など、男性的な印象ですよ。犯罪被害者の案件で、弁護士さんは具体的にどういった取り組みを行うのですか。慰謝料などの請求ですか。

事件が被疑事実を認めている自白事件の場合ですと、まず被疑者段階、では示談対応が主になります。

被害者の方は代理人が就いていなければ、加害者の弁護人と直接連絡を取らなければならなりません。これが被害者の方にとって重荷になったりすることもあります。そもそも弁護人が提示してきている示談金額が、正しいかどうかもわからないこともあります。
そうした場合に代理人として、被害者の方のために、適正な示談が成立するように働くのが主な役割ではないかと思います。

起訴されて、公判の段階に入ると、「被害者参加をするのかどうか」で変わってきまして、被害者参加を行うならば、(検事の許可を得て、あるいは検事を通して)被害者から被告人や証人に質問をすることができますので、質問事項を考えたり、法廷に付き添ったりもします。

また、被害者は、裁判の最後に法廷で意見陳述を行うことができるのですが、そのときの意見陳述の内容を事前に打ち合わせをしながら一緒に考えたりします。

判決が出て、控訴されたなら、控訴審では被害者ができることは一審に比べて少ないのですが、控訴審でも同様に被害者をサポートします。

– 最初に犯罪被害者支援の案件を受け持ったとき、どんな気持ちでしたか。

じつはかなり不安でした。神奈川県は被害者支援に非常に熱心で、サポート体制が非常に充実していますが、はたして自分一人でできるだろうかと。

それでも、その後何件か事件を重ねていくうちに、被害者案件で重要なのは、最低限の知識を前提としつつも、「目の前のその人のために何ができるかを真摯に考え、実行に移すこと」、つまり、普通の事件と変わることがないのではないかと気が付いて、それからは余計な緊張もしなくなりました。

被害者案件を持つようになってから、刑事事件での示談の対応の仕方も少し変わってきました。
もちろん、弁護人ですから、被疑者、被告人のためにというのが第一になるのですが、とはいえ精一杯被害者のためにできることをするべきだという思いが加わったからだと思います。

– 犯罪被害者支援の案件で、特に心がけていらっしゃることはありますか。

普通に接するのを心がけている、という言い方はおかしいかもしれませんが、他の依頼者の方々と何も変わらない接し方をしています。

– 普通こそが良い、というわけですね。

はい、変に意識しないことが大切だと思っています。

非行少年は、精神的な成長が著しい

今西 隆彦 弁護士

– また、事務所のホームページでは、「少年事件は積極的に引き受けています」ともお書きですね。

検事になりたかったのは、犯罪被害者に代わって公益のために、きちんと処罰をしなければならない。そういう思いがあったからです。

ですから、検事になりたくて、なれなかった当時、「刑事弁護人は、やらない」と決めていました。まして少年事件などとても…… 最初は今と対極で、むしろ積極的に避けていました。

– はい、そうなりそうですね。

弁護士になって2年目のとき、法テラスから電話がかかってきて、「少年事件、お願いします」と言われたんですね。

現在は、少年事件については専用の弁護士名簿があるのですが、当時は大人の事件と一緒くたになっていました。ぼくは「少年事件を希望しない」の欄にチェックして法テラスに提出したことがあるので、まさか声はかからないだろうと思っていたところに電話がかかってきたんです。

「どうしてもやってほしい」という話で、仕方なく、受けることにしました。会いに行ったら17歳の男の子でした。

最初、反省文を書いてもらいました。

この事件に限らず、他の事件でもですが、少年事件で最初に書いてもらった反省文は、とても反省文とはいえないような内容であることが多くて、たいていの場合書き直しをしてもらいます。この子の場合もそうでした。何度も書き直してもらいました。

そしたら、そのうち、こちらが何も言わなくても「ここ、こうしたほうがいいよね」と自分で書き直したりしてくれるようになりました。

少年事件では、少年審判の前に裁判所に宛てて作文を書かせるんですが、最初に書いた反省文から、その内容は比較にならないわけです。「よくここまで考えて書いたな」と感心するぐらい、雲泥の差なんです。

その間にも、少年と接しているたび、徐々に「伸びているな」と感じる場面があって、「少年事件って、やり甲斐があるな」と思ったんですね。

– こちらが働きかけることによって、相手に変化があれば、張り合いがありますよね。いわゆる「可塑性」といわれるものですね。

そうですね。

– 大人と比較して、本当に違いがあるんですね。

あとは、私個人が若者としゃべっているのが、単純に楽しいというのもありますね(笑) 大人になったら、10代の子たちと話す機会なんて、めったにないですから。
こっちから話しかけに行っても、「なんだこのオヤジ」って思われたり、実際言われたりするのが関の山でしょうし(笑)

– 話は合うんですか。それとも、話題を合わせに行くんでしょうか。

どうなんでしょう。向こうが合わせてくれているかもしれませんが、話が合わないと感じたことは、特にないですね。外に出てきたら、LINEでやりとりして約束して、一緒に飯食べたりしますからね。

子どもって大人のことをよく見ていて、私自身、ストレスを抱えていたり、悩んでいたりすることがあるんですが、それに気が付いて、気を遣ってくれる子もいます。
中には私が独身であることを知って、「先生、早く結婚しなきゃだめだよ!」って言ってくる子もいます(笑)

少年事件をやっていて救われているのは、むしろ自分の方なのかもしれません。

あの頃、司法試験に受からなくてよかった

今西 隆彦 弁護士

– 今西先生は、かつて、どういったお子さんでしたか。

子どもの頃、仲良く遊んでいた友達はみんな、いわゆるやんちゃな方向に行っちゃいまして、関係が薄くなってしまいました。 だから、ひとりで遊ぶようになりました。

– なかなか聞かない理由ですね(笑)

もともと、大勢で集まってワイワイやるのが好きではなかったので、読書をして過ごすことが多かったです。ファミコンは買ってもらえなかったので、友達の家でこそっとやらせてもらっていました(笑)
ところがある日、父親がパソコンゲームのソフトを買ってきてくれました。それが「信長の野望・戦国群雄伝」でした。パソコンを前に一人で何時間もゲームしてましたよ。

– 歴史はお好きなんですか。

そうですね。戦国時代や幕末、世界史だと18世紀から20世紀のヨーロッパ、ロシアや東欧を含めて好きですね。将来は世界史の研究をしてみたかったんですが、「文学部を出ても食えない」と親から止められて、法学部に進んだ感じです。

司法試験の勉強をしているときも、大審院の先例の原文なんかを読んだりしてました(笑) あの古くさい言い回しの判決文とか読んでると、たまんなくなるんですよね。
民法の教科書が我妻榮の民法講義だったり(笑)

– ああ、わかりますね。民集とかですね。

そんなマニアックなことやってるから、合格まで長くかかっちゃったんですけど。

– 今西先生の別のインタビュー記事で、司法試験受験生時代の一時期、人を見下すような傲慢な気持ちになっていたと書かれていますが、このあたりをもう少し詳しくお願いします(笑)

25歳ぐらいの頃ですが、一時期、模試で成績上位者に名前が載るようになったんですよ。特に勉強しなくても載っていたので、お高くとまって、思い上がってましたね(笑)

でも、あの頃の調子に乗った自分が合格しなくてよかったと、今は思いますね。ろくな弁護士になってなかったですよ、きっと。

実務に就いたら、「そう簡単なものではない」と、いずれかの段階では思い知るでしょうが、つまずかなくてよかったと思ってます。

– 何か言いふらしてたんですか、周りに。

いや、具体的に何か言っていたわけではなくて、たとえば試験会場に入ったときに、その場にいる受験生たちを見回して、「お前ら、バカなんだろ」と思ったり(笑)

– (笑)そう思うだけなら、実害は無いといえば無いですが。

とにかく、嫌なヤツでしたよ(笑)

今西 隆彦 弁護士

法律相談のハードルは、急速に下がっている

– この「弁護士ジャパン」のサイトには、法律的なトラブルを抱えているけれども、弁護士に相談するのは壁が高いなと思って、弁護士さんの情報を事前に調べたい人が集まっているのですが、そういう方に何かアドバイスはありますか。

最近思うのは、ここ2~3年ぐらいで急に、法律相談に気軽にお越しになる方が増えたなということです。にわかにハードルが低くなっている印象ですね。

– そうなんですか。実際に変化を肌で感じていらっしゃるわけですか。

市役所の無料法律相談ぐらいの感覚で、法律事務所へ来られる方が増えていると思います。この短い間に、ずいぶん変わりましたね。

– 考えられる理由として、インターネットの影響も大きいのでしょうか。

どうなんでしょうね。でも、うちの事務所に相談に来られる前に、すでに複数の弁護士に相談している方が珍しくなくなっているのは確かですね。無料相談をいくつも渡り歩いているような人もいます。

そうやって、誰に任せるかを見定めているんでしょうね。依頼したいんだけど、誰に依頼すればいいのか迷っている方ですね。

– この相模大野に独立開業なさった理由は、何かあるのでしょうか。

じつは、自分にとって縁もゆかりもない街なんです。
生まれは大阪なんですが、8か月で東京に移ってきましたので、東京出身だと言っています。それで、前の事務所が横浜にあったので、仕事の継続性を考えたら、神奈川県を出ないほうがいいなと思い、交通の便や必要経費などを検討した結果、この街に決めました。

– 小田急線の電車がほぼ全部停まるようですし、都内へのアクセスなどは抜群でしょうね。どういう街でしょうか。相模大野は。

ニュータウン的なので、住民のふれあいみたいなものは比較的薄く、繋がりが消えつつあるかもしれません。でも、学生が多くて、近くにリニア新幹線の駅もできる予定なので、将来のポテンシャルが高い街だと思っています。

– 学生が多い街だと、少年事件が多くなるわけではないですね。

そういうことではないです。神奈川県全域の少年事件を受け持っていますから。小田原でも横須賀でも行きます。


「仕事が好きなので、つい仕事をしすぎてしまう」「意識的に週1日は休んでます」と語る今西弁護士は、これから中小企業を支援する法務案件にも積極的に取り組んでいきたいという。刑事的な活動で培った勉強熱心さと行動力で、多くの社長さんに喜ばれる弁護士になってくださるものと期待したい。

今西 隆彦 弁護士

今西 隆彦 弁護士
今西法律事務所

神奈川県弁護士会
明治大学法学部法律学科 卒業
日本大学大学院法務研究科 修了

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