鬱で苦しむ社会人に寄り添う、理数系&学究肌の法律家 / 高橋 淳 弁護士

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知的財産権に関する研究で博士号取得のため通学するなど、特許を中心に企業法務の現場で活躍する高橋 淳 先生(TH弁護士法人)にお話を伺った。
インタビューの開始直前まで、部屋でクライアントと弁護士が熱心に議論していたことが気になって、質問をさせていただいた。

文学から物理まで、全方位型の関心

– 高橋先生の事務所には、なぜ、続々と依頼人が集まるとお考えでしょうか。

その理由は想像するしかありませんが(笑) おそらく、他の人がやらないアドバイスをするからだと思います。
やはり「常識を疑う」という姿勢が大事です。今までのやり方は、本当にそのままでいいのか。もっと他にいい方法があるのではないかと、考えを積み重ねていくことですね。

– 単に優しさというだけではなく、理屈で突き詰めた結果の配慮なのでしょうか。

そうなのかはわかりませんが、常識や思い込みに引きずられないように、あらゆる可能性を考えて、あらゆる側面から合理的に物事を見ていくよう、心がけています。

複数の弁護士に相談した後に、私の事務所へ相談にやってくる方が多いようです。
うちの事務所は「安さ」では勝負していません。そのぶん、案件に全力で取り組んでいきます。

– インターネット経由の相談も多いのではありませんか。

そうですね。オンラインの法律相談に参加するようになってから、大幅に相談者が増えました。今までに多様な分野の業務経験があるので、いろいろと回答を書き込んでいるうちに、全国ランキングで上位に出まして、あまりにも相談者が多く集まるので有料化しました。

– かつては、どのようなお子さんでしたか。

山形県山形市の生まれでして、何か特定のものというより、いろんなことに興味を持っていました。

本を読むのが好きでした。何でも読みましたね。ミステリー小説を、シャーロック・ホームズ あるいはローマ帝国に関する本なんかも幅広く読んでいます。

ちなみに、弁護士になってからは哲学書を読むようになりましたね。正義とは何なのか、考えたりしたこともあります。

– 高橋弁護士にとって、正義とは何でしょうか。

それは未だにわかりませんね(笑)

– 小さい頃から、勉強もできたのでしょうね。

わりとそうですね。5科目、全教科で自信があったんですが、地元には大手の予備校がありませんでした。仙台まで行かなければ大きな予備校がない環境なので、通信教育を利用して独学をしていました。

– 東京大学の理科二類に進まれたのですね。

最初は文系クラスに進んでいたのですが、数学や物理をもっと勉強したいと思って、理系に変えたんです。文系だと数学とかは途中で終わっちゃうじゃないですか。微分積分とか。

– そうですね。文系だと微分方程式をやらなかったりしますし……。

化学が好きで、分子生物学、バイオテクノロジーにも興味がありましたね。アミノ酸は生命の元となる物質で、海の中の窒素分子や水素分子などが偶然結びついて地球上に発生したのですが、そのアミノ酸を実験室の中で作ることに成功した「ユーリー・ミラーの実験」などに興味を抱きました。

また、量子物理学も興味があり、スティーブン・ホーキング博士の本も好んで読みました。

また、東京大学を目指したのは、「外の世界」が見たくて東京に出ようと思い、どうせ東京に行くなら高い目標を据えたほうがいいだろうと思って目指しました。

理科二類から、経済学部、そして弁護士へ

– 学部ではどちらに進まれたのですか。

経済学部です。

– どちらかというと、文系に近いのではありませんか。

経済学は文系に分類されていますが、高度な数学を使って分析をするので、いわゆる理系の学問よりも数学の素養が要求されます。

大学生の頃はバブル時代で、当時はケインズ経済学に共感を覚えていました。一方で、当時は、マネタリズム全盛期で、ケインズ経済学は全否定されているような雰囲気があり、これ以上、経済学をやるのもどうなんだろうと思い始めました。

– そこから法学の道に進み始めたのですか。

いえ、それはまだ思わなかったですね。
当時やっていたのは、テレビ番組を観覧するアルバイトを集める仕事です。

– 番組を生で観覧して、お金までもらえるのですか。いいですね!

始まったばかりの頃の番組には観覧希望者がいないので、スタジオに観客として座って、番組を盛り上げるバイトですね。
いちおうプロダクションに所属して行うバイトなのですが、テレビの業界内の序列でいえば、下っ端中の下っ端だということで、これはいかんと思いまして。

– そうですね。せっかく東大に入ったのに……。その頃、焦りはありませんでしたか。

焦りのようなものはありませんでしたが、資格を取らなきゃダメだろう、資格を取らなきゃ、将来どうやって食べていけるのかと思っていました。

いろいろと調べまして、最初は公認会計士を受験しようと思いました。その中の科目に商法があって、商法の本を読むんだけれども、いまいちよく理解できない。どうやら、商法は民法の特則らしいと知り、民法も勉強するようになりました。

しかし、やっぱり深いところまで理解できない。ということで最高法規の憲法に関する本を読むようになって、そうなったら、司法試験を受験しようと思いました。出身学部も関係ないと知りましたんで。

また、当時は司法修習生はお金を国からもらいながら勉強できたんですね。公認会計士はそうではなかった。なので、司法試験のほうに魅力を感じましたね。

「わかったふりをしない」から上達する

高橋 淳 弁護士

– 司法試験は当時、日本最難関の国家試験といわれていましたが、ためらいはありませんでしたか。

いえ、合格する自信はありました。

– すごいですね! 実際に合格なさったわけですが、司法修習の頃の思い出は、何かありますか。

今にして思えば、司法修習生の頃が、人生でダラダラした最後の期間だったかもしれないです。

ただ、当時は知的財産権に興味があって、アメリカが世界最先端だったので、アメリカの大学に留学したいという希望がありました。事務所に就職したとき、留学をさせてもらうためには、司法修習での成績が重要になると知りまして、後半はしっかり勉強しました。

– アメリカへは留学なさったのですか。

いえ、結局、留学はしませんでした。たまたまタイミングが合いませんでしたし、今から行こうとは思いません。今の段階で留学をするとなれば、現在のクライアントさんたちをほったらかしにしなければなりません。それはデメリットでしかないです。

その代わりでもないのですが、法学の博士号をとるために、現在は筑波大学の博士後期課程に通学中です。箔を付けるという意味では、ただ海外に留学するよりも、国内の大学でも博士号をとったほうがいいと思います。今はインターネット上で海外の論文を読むことも手軽にできますし。

博士号を持っていると、海外のクライアント向けに営業するときに役に立ちますね。「ドクター」の称号は、海外で威力を発揮するんです。

– 筑波大学では、どのような研究をなさっているんですか。

発明には「進歩性」というものが必要で、その進歩性についての研究です。

法学の博士号取得後は経営学の博士号もとろうと思っています。コーポレートガバナンスについて、もっと研究したいですね。これは法学の問題でもあり、経営学の問題でもあり、経済学の問題でもありますから。研究者 兼 実務家で行きたいと考えています。

– 「研究者 兼 実務家」では、十分な時間を確保するのも大変でしょうが、時間の作り方で気をつけていらっしゃることはありますか。

効率を上げつつ、クオリティを下げない努力が重要で、弁護士業務ではその努力を特に進めていく余地があります。今までの弁護士は殿様商売でよかったかもしれませんが、これからはそうはいきません。

また、自分にしかできない仕事だけに注力して、そうでない仕事は他の人に任せることで、時間を捻出しています。

– 新人弁護士の頃のお話を伺いますが、どういった法律事務所に勤務していらっしゃいましたか。

しばらくは、国際関係の法律事務所や、外資系の事務所を渡り歩いていました。

– 語学も堪能なのでしょうね。

英語はまあまあです。ただし、海外とのメールのやりとりは、すべて英語です。

– 英語ができるようになるには、どうすればいいのでしょう。

非常に重要なのは「わかったふりをしない」ということです。英語に限りませんが、わからないことを隠して、「わかったふり」をしている人は伸びません。
必要に駆られてできるようになるわけで、わからないことを受け入れることが大事だと思います。

知人に弁護士を紹介してもらうのは「意外とよくない」

– 弁護士という仕事のやりがい、あるいは喜びを感じるのは、どんなときですか。

やはり、依頼者のためになる結果が出たときが一番嬉しいですね。

– でも、望んだ結果が出ないときがあるわけですよね。

もちろんそうですが、たとえ負けるにしても「負け方」が大事じゃないですかね。
「負けたけれども、仕方がない」とクライアントに納得してもらうためには、とにかくクライアントのために知恵を絞って、一生懸命やるしかない。

弁護士業務は、他の一般的な仕事と変わらないと、私は考えています。とにかく、目の前の案件にしっかりと取り組むことが最重要です。

– 職場のメンタルヘルス問題にも取り組んでいらっしゃるそうですね。

たまたま、うつやモラハラなど、職場の悩みを抱える方々からの相談を多く受けているのです。
弁護士の中には、気分が沈んでいる人の気持ちが理解できない人がいます。よくもわるくも精神状態が強靱なために、「それぐらいのこと、我慢できるでしょ」と思ってしまい、精神的な辛さに共感できない人が、この業界には少なくないのです。

その点で、うつ状態に共感できる弁護士の法律相談は、ブルーオーシャンかもしれません。

– 職場の問題について法律相談を受けて、過去に印象に残っている事例はありますか。

パワハラのぬれぎぬを着せられて、人事部から調査を受けており、配置転換されそうなので、何とかしてほしいとの依頼を受けたことがあります。証拠資料を整理した上で、裁判例を引用しながら反論文書を作成し、交渉した結果、ぬれぎぬが晴れて解決することができました。

また、女性が不倫相手の妻から慰謝料を請求されるという事例で、不倫相手である男性が妻側についたため、女性が精神不安定になってしまったことがあります。そういう例は少なくないのですが、女性側の代理人として有利に解決したことはあります。

– 気分転換には、なにをなさっていますか。

囲碁や将棋です。司法修習のころからコンピュータ相手に対戦を始めましたが、当時に比べれば、今の人工知能は比べものにならないほど強くなっているのを実感しています。

– 最後に、法律的なトラブルを抱えているけれども、どの弁護士に相談すればいいのか迷っている方々へ、アドバイスをお願いできますでしょうか。

まずはネットで検索して、自分の相性に合いそうな弁護士に相談してほしいと思います。
ネクタイを締めている弁護士がいいという人もいるし、そうでないほうがいいという人もいます。

知人からの紹介で弁護士に相談するのがオーソドックスですが、その弁護士と相性が合う保証はありませんし、仮に相性が合わない場合やトラブルが起きた場合でも、断りづらいです。その弁護士を紹介してくれた人の顔を潰すことになりますからね。

なので、他人に紹介してもらった弁護士に会って相談するのは、意外とよくないと思います。

– このインタビュー記事も、インターネットを通して、サイトやプロフィールではわからない個々の弁護士の人柄を具体的に知っていただこう、という方針で進めています。

弁護士の人柄は大事だと思いますよ。
どんな人柄だからいい、ということではなく、あくまで、その相談者とその弁護士、個々の相性の問題ですね。


企業法務に精通する弁護士は、「強者の味方しかしない」という先入観を、つい抱きがちであるが、実際にはそんなこともなく、従業員や個人の相談にも積極的に乗る方も多い。

「すべてを合理的に、シンプルに」が信条で、切れ味の鋭い冷静なコメントが印象的な高橋弁護士だが、その一方で、会社の無茶な方針に逆らえず、メンタルヘルス問題で苦しむ社会人の悩みにも真摯に向き合う温かさも感じる。
きっと「従業員が十分な休息を取って、健康的に働けてこそ、長い目で見れば企業も発展していく」という帰結に至ったのだろう。

TH弁護士法人

高橋 淳 弁護士
TH弁護士法人

東京弁護士会
2016年 TH弁護士法人開設

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