「らしくない弁護士」を求める人々の存在が嬉しい。 / 田畑 麗菜 弁護士

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埼玉県の交通の要所、JR武蔵浦和駅、その脇を南北に走る国道17号線沿いに、レンジャー五領田法律事務所がある。今回は田畑 麗奈 先生にお話を伺った。
「写真は、撮るのも撮られるのも大好き」だという田畑弁護士の提案により、事務所近くに架かる小さな橋の上にて即席撮影会が開催されるなど、少々不思議なインタビュー取材となった。

理不尽さを跳ね返す力が欲しかった

– 弁護士を目指そうとしたきっかけって、何かあるんですか。

家族や親戚などで、身近に法律家がいたわけでは決してなくて、中央大学の法学部に進学したので、中央大学法学部といえば将来は法律家かな、というイメージがありますよね。

– 伝統的にそうですね。

だけど、どちらかというと、ミュージカル女優になりたくてですね。

– ミュージカル…… もう少し詳しくお願いします。

高校の頃には、ミュージカル部に入っていまして、女子校だったので宝塚みたいな感じで演じていました。大学でも4年間、ミュージカルばっかりやっていたんですよ。授業に出てる暇なんかない、みたいな(笑)

– (笑)とはいっても、高校から、中央大学の法学部へ自動的に上がれるわけじゃないですよね。

推薦だったんですよ。あくまでもミュージカルは趣味で、それで食べていこうとは思っていないし、将来は弁護士とか法律家になるのだろうと、漠然と思っていました。

– 正直、弁護士っぽい雰囲気ではないですよね。劇団でも、たぶん裏方ではないんだろうなという感じですね。

大学1年のとき、ミュージカルで主役に抜擢されまして、嬉しかったんですけど、ただ、弁護士を目指そうとして入っていたゼミを、辞めさせられたんですよ。

とにかく、ミュージカルの練習が優先だから、「炎の塔」(中央大学で資格試験の受験を目指す学生の自習施設)にも、入っちゃダメ!みたいな。

– それって、趣味で済んでないですよね。

とにかくミュージカル漬けの4年間でしたけど、後悔はしてません。

– そこから司法試験という流れだったのでしょうが、どういう弁護士になろうという意識はありましたか。

具体的なものはなかったんですけど、昔から、曲がったことが大嫌いだったんですよね。社会に出ると、理不尽だなと思うことをされても、呑み込まなきゃいけないことがあると思うんですね。

でも、それがどうしても嫌で、理不尽だなと思ったときに「やめてください」と言って、跳ね返す力が欲しかったんです。

– 主張するだけでなくて、法律で裏付けられた力が欲しかったわけですね。

そうですね。自分だけでなくて、家族や友人が理不尽な目に遭っても嫌ですよ。そういう人たちを守れるようにできたらいいなあと、ふわっと思って(笑)

– なにか理不尽な目に遭った経験があるわけですか。

学生のとき、バイトでサービス残業をさせられたことがあって、タイムカードを切った後に1時間ぐらいかかる清掃をさせられて、「それが決まりだから」と言われても、おかしいなと思っていたこともありますね。

– さらに子どもの頃はどうですか。小学生の頃とか。

小学生の頃は、理不尽といっても知れてるというか、男子にちょっかい出されても、「やめてよ~」と言えば丸く収まったりしますので、やっぱり大人になってからの理不尽のほうが厳しいですよね。

– ミュージカル劇団の中でも、理不尽で腹の立つこと、ありましたか。

いやあ、大学3年のときに副団長になったんですけど、団長がしっかりした人だったので、私はふわっとした副団長でした。みんなを和ませる役割ってわけじゃないですけど。

– バランスが取れてたわけですね。しっかりした団長と、ふわっと副団長で。

私は、キッチリとみんなをまとめる力はないんですけど、それをサポートをするほうが性に合っているかなと思っています。

本当に、弁護士になる前は何も考えてなかったので、弁護士らしい、かっこいい思い出を何も言えないんですよ。楽しいことだけできたらいいな、と思っていただけなので。

私らしくいることが、誰かの助けになる

田畑 麗菜 弁護士

– ご出身はどちらですか。

群馬の前橋です。

– 子どもの頃の、楽しかった思い出はありますか。

ずっと楽しかったです。それで、今日に至るという(笑)

– それはよかったですね(笑)

絵本を読むのが好きでしたし、外で遊ぶのも好きでした。

子どもの頃はゴム跳びが流行っていて、ただ、うちは田舎で、学校の友達が近所に住んでいないんですね。だから、木と木の間にゴムひもを張って、ひとりで練習してました。

– ゴム跳びの自主練をしていたんですか。

意外と努力家なんですよ。遊びにも余念がないんです。

– 仕事をしていても楽しいですか。

はい、弁護士の仕事は本当に面白いし、楽しいと思っています。調べたいこともたくさんありますし、勉強をしたいし、話を聞きたい人もいます。

むしろ遊びに興味がなくなってしまったので、友達からの誘いを断っていたら誘われなくなってしまって(笑)

– 今は3年目だそうですが、新人時代は大変だったんじゃないですか。

以前は別の事務所にいまして、そこはボス弁がいて、兄弁がいて姉弁がいてという、いわゆるピラミッド構造になっていたんですね。私は下っ端で、まわされる仕事をとにかくこなすという役回りで、今ほどは仕事を面白いとは思えなかったんですね。

この事務所に移ってきまして、今は広告などで私のことを知って相談に来てくださる方も増えました。「他の弁護士さんだと話せなかった」とおっしゃる方や、「私にどうしても聞いてほしかった」と、遠くから時間をかけてやってきてくださる方もいらっしゃいます。

– そういったところに、やり甲斐を感じているのですね。

はい、ですから、私が私らしくいることで、相談してくださる方の助けになれるというのが、すごく嬉しいんです。

– いいですね。どういった状態が「私らしい」とお考えですか。ふわっとした感じですか。

そうですね。いかにも「わたしは弁護士です」と言わんばかりに、難しい言葉を使ったり、頭よさそうな感じにはせず(笑) 押しつけがましい態度を取ったりせず、肩ひじを張らずに振る舞う、というところかもしれません。

– いかにも弁護士っぽい振る舞いで、自分を作ったりしない、ということですね。

そうです。この事務所に入ったばかりの頃は、「弁護士としての威厳を持たなきゃ」「しっかりしなきゃ」と意識していました。

以前に在籍していた事務所では、「いかにも弁護士らしい弁護士」を求めている依頼者が多かったので、服装や振る舞い、言葉づかいについて先輩の弁護士に注意されたこともありました。「当事者に寄り添いすぎてもいけない。客観的に、第三者として話を聞かなきゃいけない」と言われていました。

もちろん、そういった凄そうな弁護士像を再現することで、皆さんに喜んでいただける場合も多いと思います。

でも、少数かもしれませんけれども、「法律事務所に行くなんて無理だと思っていたけれども、あなたになら話せる」とおっしゃる方がいて、それがとても嬉しいので、今は無理をしないようにしています。

弁護士として正しくないかもしれないけど、こういう弁護士が、ひとりぐらいいてもいいかなと思っています。

– 相談者にあまり共感しすぎると、相談者の気分に自分も引きずられて、大変だろうなと思うのですが、いかがですか。

そうなんです。皆さん、すごい暗い顔をして事務所にいらっしゃるんです。でも、相談の後に明るい表情をして、「こんなこと、友達にも話せませんでした」「また、前を向いて歩いて行けそう」と、お礼をおっしゃって帰って行かれるのを見ると、こちらも嬉しい気持ちになります。

– たしかに、そういうタイプの弁護士さんは珍しいかもしれないですね。身が持たないかもしれないと思ってしまいます。

弁護士って、皆さんからマイナスのイメージを持たれていることが多いと思うんです。

どうせ自分たちとは違う世界で生きてきて、相談でも適当に話を聞き流して、お金にならなきゃ動いてくれないし、どうせ手を抜くんでしょ…… と思われているのはわかっているんですが、そのイメージを少しでも和らげたいと考えています。

高尚な趣味なんて、ありません

田畑 麗菜 弁護士

– 離婚相談などを受けることが多いんですか。

そうですね。増えていると思います

– 相談を受けていて、やっぱり男女の関係って難しいなと思うこともありますか。

こういうことを言っていいのかわかりませんが、高校生ぐらいのときから、友達の恋バナを聞くのが好きなんですよ(笑)

内心、「他人の恋愛の愚痴なんか聞いてられない」と思っている弁護士もいるんですが、私は好きです。

– (笑)暗い話でもいいわけですね。

暗い話でも全然、苦にはならないですね。そして私がアドバイスをできるのであれば、こんなに嬉しいことはないです。

最近増えているのが、婚約破棄の問題ですね。ちょうど私と同年代ぐらいの女性が陥りやすくて、出産したいとか、早く結婚したいという気持ちが、婚約者から一方的に裏切られて悔しいみたいな。その気持ちは、男性にはわかんないんですよ。

– 弁護士の仕事をしていると、「男って、どうしようもないな」と思うこともありますよね。

いっぱいありますよ(笑) でも、逆もしかり、ですけどね。

それと、両性の平等委員会というところに所属している関係で、つい最近、デートDVについて大学生に講演してきました。

– デートDVもこのごろ、問題として採り上げられてますよね。

私も以前、「オレ様系」の男性と付き合っていたことがあるので(笑) 実際の事例をもとに、寸劇の台本を作って、学生たちに演ってもらったんですよ。

– なるほど、実話をもとに。

そうです。実際の私の事例をもとに。

– だいぶ身を削りましたね(笑)

引っ込み思案だという学生さんたちも、立派に演じてくれたりして、それを観た他の学生も「こんな男とは早く別れたほうがいい!」みたいに感想を言うんですが、「でも、いざ当事者になったら別れられないものでね」と説明したり、学生たちも率直に自分の身の上を話してくれたり、すごく嬉しかったです。

– 企業法務も扱うのですか。

企業法務の中でも、私は知的財産法が好きで、著作権・特許権・商標権・不正競争防止法を勉強するのが好きなんです。

いろんな有名な劇団がありますけれども、大学のミュージカルでは、それの「コピーバンド」のようなことをやっていて、著作権の話で揉めたことがありまして(笑)

– それは書けるかどうか微妙ですね……(笑)

法律家になった私が言うことではないですけれども、「学生による学内向けの無料公演」ということで乗り切ったり、「この演目はやめておこう」と自粛したりしていて、その実体験から知的財産法に興味があったんです。

じつはアニメも好きで、テレビ番組の深夜アニメが30分ぐらいの長さじゃないですか。勉強の気分転換にちょうどいいと思って、観始めたらハマってしまって。

– 意外ですね。

アニメも、知的財産の問題などが多いと思いますので、好きな業界で仕事をできたらいいなと思っています。

弁護士ですけど、高尚な趣味なんてないんですよね。ゲームも好きだし、カラオケ行くし。

友達感覚のプロフェッショナル

– 法律事務所にお邪魔して、紅茶が出てくるのは初めてかもしれません。

これは、ダージリンですね。
一応、こだわって出しているのですが、相談にいらっしゃる皆さんは、あんまり飲んでくださらないんですよね。

– それどころじゃないんでしょうね(笑)

それどころじゃないんですよね(笑) 一口だけ飲んで終わり、みたいな。

– ちょっと寂しいですね。でも、相談を通して、ゆっくり紅茶を飲めるような状態になってくれればいいですよね。

そうですね。「紅茶どころじゃない」という精神状態なのはわかるので、別にいいんですけど……。

– ダージリンのほかにもあるんですか。

ほかには、ハーブティーなど、お客さんの好みに合わせてお出ししたりもします。

受験勉強をしていたときも、合間に「お茶ぐらいはいいものを」と思っていて、凝ったことがあります。いい香りがすると癒されるんですよね。

– これから、どういう弁護士を目指していきますか。

現在は、カウンセラーの資格も取りたいと思っていて、カウンセリング教室にも通っています。

皆さんに身近な弁護士として、ご自分の心の中のことまで、ちゃんと出して相談していただけるような存在になりたいと思っています。

「友達感覚」って言ってしまうと、言い過ぎかもしれないですけど、やはり友達感覚だけではダメで、あくまで弁護士としてプロフェッショナルでいたいです。

田畑 麗菜 弁護士


弁護士がトラブルを法律的に処理しようとすれば、解決までには長期間を要することも少なくない。たとえば、事件処理以外の会話に困ってしまうような、堅物の弁護士に依頼をすれば、ときに苦痛を感じてしまうかもしれない。
いざというときに頼れて、居心地がよく、依頼者のほうから連絡を取りたくなる「らしくない弁護士」がいるのだとすれば、激変する法曹界の新時代にふさわしい、新感覚の法律家だといえそうだ。

田畑 麗菜 弁護士

田畑 麗菜 弁護士
レンジャー五領田法律事務所

群馬県立前橋女子高等学校 卒業
中央大学法学部法律学科 卒業
早稲田大学法科大学院 修了
2014年 弁護士登録(埼玉弁護士会)
2015年〜 レンジャー五領田法律事務所 入所

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