知財、環境を中心とした企業への法的サポートの提供を目指す / 町野 静 弁護士

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慶應大学法学部、慶応大学法科大学院を経て、2007年に北浜法律事務所(東京事務所)へ入所。7年のアソシエイトを経て、デューク大学ロースクールに留学。ロースクールでは環境法やADRなどの紛争解決関連の科目を履修し、LL.M.を取得した。ロースクール卒業後は日本の自動車会社などが多く集まるシカゴで、日本企業の米国進出支援や在米日系企業のリーガルアドバイザーなど中心に手掛ける、増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所にて研修を行い、その後2016年11月に弁護士法人イノベンティアに参画した町野 静 弁護士にお話しを伺った。

憧れの弁護士を目指して

町野 静 弁護士

– 弁護士に進もうと思った経緯について教えて頂けますか。

よく両親から、長く仕事を続けるなら手に職(資格)はつけた方がいいよと言われていました。特に母は結婚前までは働いていましたが、家庭との両立で仕事を諦めざるを得なかったという経験をしていましたので、手に職をつけることを考えようと漠然と思っていました。また、親戚中に会社勤めをしている人がほとんどおらず、自分が会社員として働くことのイメージが持てなかったのも理由かもしれません。手に職というといってもいくつも選択肢があり、高校時代は栄養士になることも考えましたが、完全な文系人間であったことと、弁護士というと憧れの職業でもあったので、弁護士を目指そうと思って、大学は法学部に進学することにしました

– ということで、弁護士を目指して慶應の法学部へ。

そうは言いながらも、大学に入学して最初から司法試験の勉強を注力してやっていたわけではなくて、サークル活動をしたり、バイトをしたりとごく普通の楽しい大学生活を送っていました。そして在学中に旧司法試験を受けてみたんです。受けてみたら、とても難しくて、これはとても自分には無理だなと思いました。この試験に合格するにはあと10年位必要だな!と思いました(笑)

– ちょうどその頃に法科大学院制度がスタートしましたよね。

実は、法科大学院1期生なんです。旧司法試験の難しさにびっくりして、この先どうしようかなと、就職活動でもしようかと考えていたら、法科大学院制度がスタートするということになったんです。これまでの旧司法試験と比べて合格率も上がるということで、たまたま法科大学院を受けましたら運よく受かりまして。新司法試験の合格率って、実は1期生が一番高いんですよ。確か50%程度あったと思います。そういうラッキーも重なって、私は今ここにいます(笑)

本当は別の法律事務所へ行くはずだった

– 偶然が重なって北浜法律事務所へ行かれたと伺いました。

実は小さな知的財産系の法律事務所に内定が出ていて、そちらにお世話になる予定だったんですが、急遽先生が体調を崩されて、他の事務所を探さなければいけなくなり、偶々その時募集をしていた法律事務所の一つが北浜法律事務所だったんです。とても忙しくて弁護士が足りないということで募集をしていたんです。それでお話しをうかがったり、自分で調べたりしてみると、北浜法律事務所は大手の法律事務所で、色んな分野を取り扱っているので、入所すれば、いろんな分野の経験ができて、若いうちに経験を積ませて頂けるということでお世話になることにしました。

– どのような新人時代でしたか。

北浜法律事務所の方針が、ジュニアアソシエイトには色々な事件を経験させるという方針だったので、私も多様な案件を取り扱いました。事務所として取り扱いの多かった訴訟や示談交渉、M&A、倒産事件はもちろんですが、離婚や相続といった一般民事の王道のような事件も経験しました。また、1年目の弁護士であっても自分が主任として方針を決めて進めることを求められましたので、自分で考えて筋道を立てるという部分はかなり鍛えられたと思います。
また北浜法律事務所は責任パートナー制ではないので、特定のパートナーにつくのではなくて、色々なパートナーについて仕事を一緒にしました。それによって、色々なパートナーの仕事の進め方や戦略の立て方などを間近で見ることができたので、とても得るものが多かったです。あの先生のここはすごいから私もこうしようとかという経験をいっぱいさせて頂きましたね。

知財と環境を軸としつつも、渉外分野などにも関わっていきたい。

町野 静 弁護士

– 入所の時から注力分野というのは決めていらしたのですか。

知財と環境法というのは考えていました。
ロースクールで知財の授業を取っていて、司法修習時代も、ちょうど私の年から知財部での修習が始まったため、東京地裁の知財部で修習もしました。
あと、私は環境法を大学のゼミとロースクールで勉強してきたことが大きいです。環境法というと人権よりの活動をされている弁護士の先生が多く、そういった活動は素晴らしいと心から思うのですが、私はどちらかというと、もっと企業が環境に貢献することをサポートすることが、自分の強みにできないのかというのがありました。一般市民対企業という構図ではなく、企業の方に直接働きかけができれば、結果として双方にとって良い方向に導けるのではないかと考えました。

– どうして知財や環境法に注力されようとしたのでしょうか。

私は、自然が豊かな環境で育ち、幼いころから漠然と自然環境は大事だなと思っていました。親の影響もあって環境に関わる寄付なんかも割と小さい時からしていて、何となく環境に貢献できる仕事が漠然としたいなと思っていて、そうしたら大学のゼミに環境法のゼミがあったのでそこに入ったんですね。それがきっかけで、ロースクールでも環境法を選択して、結果として今も環境法に関する勉強は続けているということになります。アメリカではエンバイロメンタル・ロイヤーという環境法に特化した弁護士がたくさんいて、環境法の側面から企業や官公庁に対しアドバイスをしています。日本の企業経営で「環境」というと、コンプライアンスやCSRの文脈で扱われることが多いですが、基本的なこと、例えばどこまでが法律上の要請で、どこからがCSRとして行っているのかをちゃんと理解していないと正しい判断ができません。環境への配慮は時代の要請になってきていますし、そういったところを弁護士が、これは企業内で働く弁護士も含みますが、もっとサポートできるようになればいいな、と思いますね。

知財に関してはそれほど強いこだわりというのは無かったのですが、ロースクールや司法修習で勉強をしていくうちに、知財の面白味や理屈的な部分に興味を持ちました。
というのも、知財というのは理屈の世界なんですが、私自身、はまると割と理屈っぽいところがあるので(笑)、色々考えて理論構成して、裁判所を説得する書面とかをいかに論理的に書けるかなど、実際にプラクティスするところがとても面白いなと思っています。自分がプラクティスしていくうえで向いている仕事なのかなと思っています。

– 渉外分野も取り扱われているんですね。

ロースクールを終えて、シカゴの増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所で研修をしていました。増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所は創業80年も続く老舗の法律事務所で、場所柄シカゴは日系のメーカーが数多く進出されているのですが、例えば自動車メーカーが進出しますと、その下請け企業も一緒になって進出してということで、クライアントの8割が日系企業で、日系企業の全ての法務周り、会社設立から、取引における契約、労務、不動産契約等々をワンストップで提供する法律事務所です。 そこでの研修中に、日系のメーカーの方々と知り合う機会が多くて、もちろん大きなメーカーさんもいるのですが、中小企業であってもアメリカに進出して技術を活かしてアメリカで頑張っているという光景を目の当たりにしました。海外展開は企業が成長していくにあたって不可欠な時代になってきていますし、そういう企業が究極的には世界的に進出することをお手伝いするようなことができればと考えています。

– ありがとうございます。まさしくイノベンティアの理念ですね。『事業会社技術とブランドそして事業を守る』。国際的に事業を展開しているあるいは展開しようとしている事業会社にとっては、知的財産や国内・国際争訟はとても重要ですよね。

はい。うちの事務所のお客さんにはメーカーさんが多いのですが、色々な技術を持っていたり、日々新しい技術の開発に励んでいます。そういった会社にとっては、知的財産は事業の核となる資産で、それを守り、活用していくことが事業の発展に直結します。 また、昨今は韓国や台湾などにだいぶ追い上げられていますが、日本のメーカーは世界の中でもトップクラスの技術やそれに対する信頼やブランド力を持っていることは間違いありません。アメリカでも日本車に対する信頼は絶大なものだと感じました。大小問わず、メーカーにとって技術やブランドを生かした海外展開は必須になってきています。

紛争解決業務のやりがい

町野 静 弁護士

– 知財と環境法以外に注力をされている分野はありますか。

そうですね、あとは、法律分野というのではないですが、紛争解決分野の仕事には引き続き取り組んでいきたいですね。北浜法律事務所時代には知財に関するものはもちろんですが、不動産関連の訴訟や調停ですとか、株主代表訴訟から売掛金の回収まで、色々な類型の争訟を取り扱ってきました。国際仲裁の取り扱い経験もありますので、今後もそういった経験を生かしていければと考えています。

– 紛争解決業務のやりがいとはどんなところにあるのでしょうか。

私にとって紛争解決業務のやりがいは2つ理由がありまして、一つは、誰かを説得するのにどうするかみたいなことについて戦略を立てて、文章を書くのが好きなので、文章でいかに論理的に説得的に書くかということや、証拠をどうやって整理し、引用すれば、裁判官に印象付けられるか。そういうことを考えてやっていく過程が好きだという事です。もう一つは、紛争の存在は依頼者にとっては大きなリスクやストレスですので、上手くいったときには、クライアントにはとても喜んでいただけますし、自分自身も嬉しいので、そういった達成感も得られるという点ですかね。

– 立場の違い、例えば、裁判の場合に原告と被告だと、どちらがいいとかというのはありますか。

私はどちらもこだわりは無いのですが、立証責任がある原告の方が訴訟遂行していくうえでは大変なので、上手くいったとき嬉しいのは原告側ですね。知財と争訟はセットのようなものなので、争訟が好きだから知財をやっているという部分も多いにあると思います。

– 印象に残っている訴訟事件について教えて頂けますか。

色々ありますが、今ぱっと思いつくのは、北浜法律事務所時代受任した、ある相続に関する事件です。控訴審からお受けしたのですが、原審では完全敗訴で困った相談者の方が相談に来られたケースでした。
一般的に、一審で負けた事件をひっくり返すというのはかなりの労力を要します。東京高裁の場合、7~8割程度が1回結審、つまり、裁判所の心証が一審と変わらず審理を打ち切る事件だと言われています。和解で終わる事案が多いですが、そうであっても完全に負けた事件を自分の方に有利な和解に持っていくためには裁判所には一審とは違った心証を持ってもらう必要がありますので、かなり難しいのが実情です。
そのため、控訴時に提出する「控訴理由書」を、これは聞く意味があると裁判所に思ってもらえるような内容にしなければならず、その件では作成に膨大な時間をかけました。事務所の文献はもちろん、本屋の文献、弁護士会の文献、全部調べまくって徹夜で控訴理由書を書き上げました。
結果として、控訴審の裁判所がこちらに有利な心証を持ち、相手方を説得してくれたため、勝訴的和解を取り付けることができました。判決ではなく、和解という一応双方納得のいく解決ができましたし、大変だった分、すごく嬉しかったです。

– すごいですね。ということは、相談者の方は別の弁護士にも相談されて断られて、先生のところに来たのでしょうか。

恐らく、そうだと思います。

– なぜそのような難しい事案をお受けになられたのですか。

相談者の方のお話しをうかがっていますと、相談者の方がとても気の毒に思えたというのが一つと、もう一つは、確かに一審の判決を見ると論理的には正しいことは書いてあるのですが、でもこの結論は本当に正しいのか、これではあまりにも気の毒過ぎるし、第三者から客観的に見てもおかしいのではないかと思いました。
請求の立て方を見直して、今回のような当事者間で感情的なしこりがあるケースでは、裁判所に訴えかけるような証拠を出したりという努力をすれば、もしかしたら覆せるかもしれないと思って、お引き受けしました。

– ありがとうございます。逆に負けてしまったケースというのはあるのでしょうか。

一つもありません、と言いたいところですが、残念ながら、ありますね。同じようにクライアントから話しを伺ううちに、これはおかしい、ということになり、一審から一生懸命やったのですが、結局控訴審で敗訴的和解となりました。
依頼者にはやれるところまでやりたいとの思いが強かったので、できるところまでやったというのはあるんですが、依頼者には申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ただ、この件の裁判所の結論には今でも全く納得できません(笑)

– 先生のその強さは正義感ですか。

そんな大しものではないと思いますが、やはり、クライアントの皆さんに幸せになってもらいたいというのと同時に、自分の持っている信念というものは大事にしたいなという思いはあります。社会的に正しいことを信じたいというか。弊所の理念は「幸福の器、正義の礎」ですが、その理念を大切にしていきたいと思っています。

– 本日はお忙しい中ありがとうございました。

ありがとうございました。


ひっくり返すのが難しい控訴審故に、受任をしてくれる弁護士がいなかった事案を、『社会的に正しいことを信じたい』と受任し、持ち前の理屈っぽい性格で、事件を再分析し、理論を立て直し、事も無げにひっくり返す。まだお若いのに、計算づくではない熱い気持ちの様に感じました。知的財産権、紛争解決・国際仲裁以外にも、未だ日本においては確立していない企業活動における環境法コンプライアンス(米国流エンバイロメンタルロイヤー)にも注力する町野弁護士の今後の活躍が楽しみです。

弁護士法人イノベンティア

町野 静 弁護士
弁護士法人イノベンティア

2000年 都立八王子東高等学校 卒業
2004年 慶應義塾大学 法学部 法律学科 卒業
2006年 慶應義塾大学 大学院 法学研究科 修了
2015年 デューク大学 ロースクール (LL.M.) 修了
2007年〜2016年 弁護士法人北浜法律事務所東京事務所
2015年〜2016年 増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所 客員弁護士
2016年〜 弁護士法人イノベンティア東京事務所

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