徹底リサーチで真相を見抜く、知的財産権のプロフェッショナル / 石下雅樹 弁護士


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証拠は世界中から集める

– 何か思い出に残っている案件はありますか。

たとえば、ある土木技術の案件です。道路を造るときに、土を盛って周囲よりも高くする「盛り土」を行うことがあるのですが、それを全部土で盛るのではなく、発泡スチロールを土の上に重ねて土台にして、その上に土をかけるという技術があるのです。それについて、某工業会が特許を保有していました。

– 土の代わりに発泡スチロールを使うほうが、いいことがあるわけですか。

たとえ、盛り土の下の地盤がゆるくても、発泡スチロールは土に比べて軽いので、地盤沈下が起きにくいメリットがあるのです。

うちのクライアントは、その技術に改良を加えたものを開発、販売して独自に事業を行っていたんですね。それで、某工業会から特許権侵害だとして訴えを起こされたという事例です。クライアントは、その会に入っていなかったんです。

– 独自の改良を加えているわけですよね。

はい、こちらも独自に、知人の弁理士とともに、専門の研究者にあたったんです。じつは、この発泡スチロールを盛り土に埋める技術は、日本で特許が出願される前に、ノルウェーでとっくに使われている技術だとわかったんです。

英語の文献、ノルウェー語の文献、海外に論文もありましたので掻き集めまして、日本で出願されていた特許は無効であると反論したわけです。

– 発明としての新しさがあまりない、というわけですか。

はい、新規性と進歩性というのですが、それらが欠けている技術に特許が与えられていると主張し、その主張が認められました。

– 日本国内では新しく見えるけれども、世界的に見ればそうでもない、という真相を発見できたところに面白さがあったわけでしょうか。

見できたところに面白さがあったわけでしょうか。

そうですね。世界中を探して証拠を集めてくるというのは、特許の案件ならではの特徴だと思います。

– なるほど、スケールが大きいといいますか、途方もない感じもしますね。

クライアントは中小企業なんですが、相手方には大企業もいて、情報格差がある。やはり、特許を武器に攻められるとなかなか厳しいんです。なので「下町ロケット」じゃないですけど、強い立場の企業群に対して、立ち向かっていく感覚はありました。

長期休暇は、あまり有り難くない

石下 雅樹 弁護士

– 著作権の問題で、何か印象に残っている事件はありますか。

社交ダンスを教えるダンスティーチャーの団体があるんですが、そのメンバーのひとりが団体から別れて独立し、そして、イギリスのダンスティーチャー団体が出版している本の翻訳権を、お金を払って取得したんですね。

ただ、もといた団体は、その本について前のバージョン(版)の翻訳権を保有していたので、そのダンスティーチャーを「翻訳権の侵害だ」と訴え、しかも他のダンス団体にも「あいつは著作権を侵害している」と言いふらしたという事例がありました。

– ずいぶんタチが悪いですね。

私はそのダンスティーチャーの個人会社の代理人を務めたのですが、こちらの主張がほぼ認められたうえで、有利に和解でき、金銭での補償まで受けることができました。

そのときに、イギリスのオーストリア人弁護士と知り合う機会がありまして、「日本人は働き過ぎだから、たまには2週間ぐらいの休暇を取れ」と言われたこともあります(笑)

– 石下先生は、あまり休暇をお取りにならないですか。

年末年始に事務所を閉めますので、長期休暇といえるのは暮れと正月ぐらいですね。夏休みは取りません。休みを取っても仕事が溜まるだけなので、あまり嬉しくないんです。

– でしたら、イギリス弁護士の忠告は、あまり聞けないですね。

そうですね。