徹底リサーチで真相を見抜く、知的財産権のプロフェッショナル / 石下雅樹 弁護士


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知的財産相談と、離婚相談の違い

– 知的財産の案件を扱う弁護士の、難しさや厳しさは、どんなところにあるとお考えですか。

法的な争いの行方が、クライアントの事業に直接響くところですね。
たとえば、クライアントの持っている技術が、第三者の特許権と正面からバッティングしていて、差し止め請求をされることがあるのです。

そうなると、相手に賠償金を支払うような問題では済まず、ビジネス自体が止まってしまうことがあるわけです。その面では責任が大きいですね。

– ダメだった場合のフォローも大変ですね。

そうですね。ですから、知的財産権をめぐる事件は、他の事件に比べても数倍の労力を要すると思います。仮にダメであっても、最小限のダメージに抑えられるように、力を尽くさなければなりません。

– 中小企業ではなく、大企業もクライアントになるわけですね。

はい、クライアントは幅広くいらっしゃいます。特許権の場合、大企業からのご依頼が多いですが、商標権では企業規模問わず依頼があります。そのほか、著作権や不正競争防止法などの案件もあります。

– 知的財産権の弁護士として、大切にしていらっしゃること、これができなければ務まらないと考えていらっしゃることはありますか。

クライアントの話を伺い、こちらが主張すべき目標点と、おおまかな着地点を、早期に見通さなければならないと思います。クライアントの希望する主張も聞きますが、法律専門家として、別の主張を提案することもあります。

それと、クライアントの話を聞くんですが、聞きすぎないことも重要だと思います。

– 聞きすぎないことが重要なんですか。

法律や争点に関わる事実とはあまり関係ない話が、延々と続くこともあります。少なくとも本人は、案件処理に関係ある話だと認識しているのかもしれませんが、こちらの判断としては「関係ないだろう」と思うこともあります。

ただ、だからといって無理に打ち切れば、クライアントの気分を害しますので、話題を変えながら、徐々に軌道修正していくようにしています。

– たとえば離婚相談だと、とにかく無制限に話を聞き続けるような弁護士さんもいらっしゃいますね。

知的財産権をめぐる法律問題では、人の感情、喜怒哀楽が直接絡むような案件は、あまりありません。ですから、うまく話を軌道修正させて、早めに核心に切り込むことが重要となります。

– たしかに、納得いたします。離婚相談とは違いますね。

感情を治めるよりも、早期に具体的な戦略の話をして、解決策を提示したほうが、クライアントの利益になるんですね。

また、同じことを伝えるにしても、伝え方によって印象が大きく変わりますので、表現の仕方には細心の注意を払っています。クライアントの話の内容を聞くことも当然重要ですが、人間としての心理や傾向、性格なども把握した上で、物事を伝えなければなりません。

ですから、イソ弁がクライアントに重要なメールを送ったり、報告書を提出したりするときには、私が基本全件チェックします。同じことを伝えても、印象が180度変わることもあるからです。

– なるほど、それは知財弁護士に求められる国語力もしれませんね。

たとえば、ある案件についてネガティブな見通しがあるとします。でも、その見通しを単に伝えるだけでは、クライアントの心に不安を残すだけです。ネガティブな見通しに対する具体的なリスク・ダメージの度合いと、対応策を併せて伝える必要があります。

契約書は、事業の設計図

石下 雅樹 弁護士

– ホームページのプロフィールを拝見すると、契約書チェックも多岐にわたるんですね。英文・和文も含めて、あるいは知的財産やIT関連だけでなく、フランチャイズ契約書や雇用契約書もチェックなさるんですね。

そうですね。いろいろと点検しています。

– 業界内には「契約書チェックの仕事がウンザリだから、町弁になったんだ」という方もいらっしゃいます。石下先生は、契約書の点検業務について、どうお考えですか。

決して嫌いではないですし、毎日のようにやっています。

私は契約書チェック、面白いと思うんですけどね。契約書というのは、その事業における縮図、あるいは設計図なんですよ。ですから、契約書の条文を通じて、事業の構造を知ることができます。

事業の構造を知ることができれば、クライアントへの法的なアドバイスもしやすくなりますし、のちに紛争が起きても対応しやすくなります。もちろん、契約書がしっかり作られていれば、無用な紛争を未然に防ぐこともできます。

– 弁護士として、今後こういうことに取り組んでいきたい、などのビジョンはお持ちですか。

知的財産権は、私にとって主要な柱ですし、いくら取り組んでも、何年やってもなかなか極めきれないと思っています。ですから、さらに磨いていきたいです。

– 最先端の分野ですから、法改正を追いかけていくようなイメージもあるのですが、いかがですか。

たしかに法改正は盛んに行われていますし、フォローしていなければなりませんが、むしろ科学技術の進歩のほうが早くて、追いかけていくのが大変だと思います。

極めようと思っても、なかなか極めきれないけれども、さらに研鑽を積んでいきたいです。

– 弁護士法人クラフトマンの、所属弁護士は何人いらっしゃるのですか。

私も含めて6名です。弁護士法人として、ここのほか、横浜にオフィスがあります。

– 弁護士の採用について、どのようにお考えですか。

最も大事なのは、人柄ですね。それに尽きると思います。

司法試験に合格していれば、弁護士として最低限求められる能力は担保されていると思うんですよ。

– 人柄というのは、具体的にはどういうイメージでしょうか。

まずは、素直であること。素直であれば、他人の意見を聞けますし、期限を守れるだろうし、すべき努力をするんだろうと思います。

– 素直であれば、成長も早いですよね。あまり自分勝手なこともしないでしょうか。

それもあると思います。素直でさえいれば、何とかなります。たとえ知的財産権のことをまったく知らなくても大丈夫です。うちに入ってくる弁護士は、ほとんどそうですから。

英語がわからなくても大丈夫です。もし、英語の仕事が嫌なら、私がやりますので(笑)


依頼者から必要な話を引き出し、たった数枚の書面から手がかりを掴み、世界中から証拠を探してトラブルの全貌を見通そうとする石下弁護士の仕事は、一種の「謎解き」の魅力がありそうだ。

もちろん、依頼者が抱えるトラブルの解決が第一であるから、単なる謎解きで終わってはいけないわけだが、どんな世界であっても、仕事を楽しんでいるプロフェッショナルこそが一番強い。このインタビューを通じて、そのことを改めて感じさせられた。

弁護士法人クラフトマン

石下 雅樹 弁護士
弁護士法人クラフトマン

1994年 東京大学文学部西洋史学科中途退学
1994年 司法試験合格
1995年 最高裁判所 司法研修所入所(第49期司法修習生)
1997年 弁護士登録、勤務弁護士
2000年 独立し事務所開設
2005年 弁理士登録

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