トラブルの現場へ駆けつけます。マンション管理専門の法律家 / 河口 仁 弁護士


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「いつでも気軽に相談に来てください」と、多くの弁護士が法律事務所の心理的ハードルを下げようと努力している。しかし、「はたして、相談者が来るのを事務所で待っているだけでいいのだろうか」と、法律相談のありかたに根本的な疑問を抱く弁護士もいる。

持ち前の行動力を武器にして、マンショントラブルを抱える管理組合のもとへ足を運び続ける河口 仁先生(K&K PARTNERS法律事務所)にお話を伺った。

分譲マンションの「管理費滞納」問題に挑む

– 河口先生が、弁護士として特に力を入れていらっしゃる分野は、何かありますか。

マンション管理の法律問題でして、特に分譲マンションの管理費の滞納問題に多く携わっています。

分譲マンションの区分所有者(部屋の持ち主)は、マンションに管理費を毎月支払います。管理費は管理組合が受け取って、マンションの共用部分(廊下や階段、エレベーターなど)のメンテナンス費用、あるいは管理人の給料にまかなわれたり、将来の大規模メンテナンス工事のために、修繕積立金を貯めておいたりするために使われるのですが、その管理費を支払わない区分所有者がいます。滞納が続いていれば、回収しなければなりません。

管理費を払ってもらえないと、共用部分の維持ができませんので、マンション全体の資産価値も低下してしまいます。

「マンションは、管理を買え」という言葉があるぐらい、管理がしっかりしているマンションを選ぶべきだといわれています。

– マンションのみんなに迷惑がかかるわけですね。管理費の滞納というのは、そんなに発生しているものなんですか。

実態として、管理費の滞納問題がまったく起きていないマンションは少ないと思います。実際に現場で仕事をしている肌感覚で言いますと、100戸あるマンションであれば、そのうち1戸の割合で滞納しているものです。

– どれぐらい滞納しているものなんですか。

1年、あるいは2年以上ですね。5年以上の滞納も珍しくありません。

– そんなに滞納できるものなんですか。

そうですね。そこは、賃貸住宅の家賃の滞納とは違う点ですね。家賃の滞納が続けば、賃貸借契約を解除して追い出せばいいのですが、管理費の滞納の場合、滞納をしているのは部屋の所有者ですから、管理費を滞納していても、部屋の所有権を失うわけじゃありませんから、管理費の滞納を理由に出て行けともいえません。

それに、滞納者にだけ、エレベーターや廊下を使わせないというわけにもいきません。ですから、管理費の滞納がどんどん膨らんでいきやすいのです。

– ただ、そこまで大きな額にはなりませんよね

例えば、滞納額が月2万円として、2年滞納しても約50万円です。それを回収できたときに、その25%を弁護士報酬として頂いております。

– 回収するまでに何か月もかかるわけですよね。なかなか割が合わないようにも思うのですが、いかがですか。

そうですね。ですから、たくさんの管理費滞納の案件を同時に進めております。

弁護士が滞納管理費の回収の依頼を受ける場合、依頼者はマンションの管理組合様になります。それぞれの部屋の所有者が集まってできているのが管理組合でして、皆さん、法律に関するプロではないんですね。

ですから、法律的な問題が起きていても、そもそも問題意識が発生しなかったり、あるいは問題意識はあっても、解決しようとするモチベーションが高くない場合もあります。

– 他のビジネスで行われているような債権回収とは異なり、滞納管理費の回収では、当事者の気分がせっぱ詰まっていないのでしょうか。

それはあるかもしれませんね。誰かがマンション管理費を滞納している問題を、住民の方々になかなか「自分事」として受け止めてもらえない課題があるのです。

それで、問題が相当大きくなってから相談をいただく場合があります。

日本全国のマンション管理トラブルに対応します。

河口 仁 弁護士

– マンション管理の法律問題の面白さがあるとすれば、何ですか。

マンション管理は、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)という法律によって動いていて、特殊なんですよ。

まるで、マンション全体がひとつの街のようで、そこでひとつの社会が成り立っているといえます。ありとあらゆる問題が発生し、凝縮しているんです。

– なるほど、マンションがまるごと、自治体のようになっているわけですね。具体的にどういう問題が起きているんですか。

基本的に、マンションには管理規約が定められていて、それがマンションという自治体の条例みたいなルールになっています。

国土交通省が「標準管理規約」というガイドラインを出していまして、それに沿って、管理規約を作っているマンションが多いのですが、そのマンションだけの独特な規約を定めていたりするケースもあります。そのダイナミックさも、ひとつの面白さですね。

– あるマンションでは通用していた解決策が、別のマンションでは通用しないということも起きうるわけですね。

そうです。だから、いろんなマンショントラブルの相談を受けても、そのマンションの管理規約を持って来てもらわないと、弁護士としては何もアドバイスを言えないんですよ。

それぞれのマンションに、それぞれのルールや秩序があって、でも一方で、一戸ごとの個人の自由もあるわけですから、そこは判断が難しいところです。

たとえば、それまではペットを飼うことが黙認されていたマンションにおいて、ペット禁止の規約を徹底しようとする場合、それまで飼われていたペットをどうするのか、という問題もあります。

– どうするんですか。

例えば、現在飼っていた「一代限り」はOKということにしたりします。

– 今飼っているペットがお亡くなりになるまで、というわけですね。すぐに施行されるペット禁止ルールではなくて、妥協案ですね。

そもそも、ペットを飼っていない多数派が、ペットを飼っている少数派を、数だけで押し切っていいのかという問題もあります。

– 近ごろですと、特に東京では民泊をどう扱うかという問題もあるかと思うのですが、実際はどうなっているのでしょうか。

民泊も、そのマンションの管理規約で禁止になっているかどうか、そこに集約されます。

やはり、知らない人がマンションに出入りするのは怖いという人がいますので、問題として徐々に浮上し始めていますね。

一時期は、シェアハウスをそれぞれのマンションで認めるのかどうか問題になっていました。

– やっぱり、騒がしいから嫌だという近隣トラブルになりやすいのでしょうか。

結局は、そういうことですね。

– そういえば、マンション管理士という資格がありますよね。弁護士業務とバッティングすることはないのでしょうか。

バッティングすることもあります。ただ、マンション管理士の資格は、管理会社の従業員など、会社に勤めている方が取得されるケースが多く、マンション管理士として独立開業している方はそれほど多くありません。

また、マンション管理士さんは、管理組合に代わって交渉を行ったりすることはできません。相談に乗ってアドバイスするところまではできるけれども、依頼を受けて代理することができないんですね。

管理組合の方で、自分たちで直接交渉できないというときには、我々弁護士に相談していただくことがあります。

– ほかに、河口先生にお願いするからこそ、依頼人にメリットがあるといえる、ご自身の強みはありますか。

フットワークが軽いと思います。私の場合、事務所にいて相談を待つというスタイルは採らず、自分から管理組合の方々に会いに行くスタイルを取っています。

– そうなんですか! 大変ですね。

管理組合の方々は、そのマンションの部屋を所有しているという理由だけで集まっている住民の皆さんですから、法律とは無縁の方々ですし、仕事としてやっているわけでもありません。そのような方々に「相談があったら事務所に来てくれ」と言うだけでもハードルが上がるんですね。

– そこは、自ら行って差し上げるわけですね。都内のマンションだけではありませんよね。

はい、千葉・神奈川・埼玉などは当然行きますし、基本的に、日本全国どこからのご依頼にも対応します。