トラブルの現場へ駆けつけます。マンション管理専門の法律家 / 河口 仁 弁護士


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多様な立場の依頼者や相手方と向き合う困難

河口 仁 弁護士

– マンション管理に弁護士として携わる難しさはありますか。

問題解決がマンションごとに多岐にわたること、そして、いろんな人々を相手にしなければならないことです。管理費の滞納ひとつ取ってみても、いろんな背景事情があります。病気が理由で払えなくなった、あるいは収入が途絶えて、たとえば生活保護を受けている方もいます。

– マンションを買っている人が、生活保護を受けられるんですか。

原則として既にローンを完済している方が対象ですね。生活保護費がローンの返済にまわされてはいけませんから。

– そういう方から、管理費はもらいづらいですね。

それでも、そのマンションに住み続ける以上は、払ってもらわなければならない費用です。そのマンションを維持するための必要費なんですから。賃貸物件に住んでいれば、生活保護を受けていても、家賃を払わなければなりませんよね。

– さっきのお話のように、マンションがひとつの街だとしたら、管理費は税金のようなものですね。地方税といいますか。

そうかもしれませんね。また、管理費を滞納している破産者を相手にすることもあります。自己破産で免責がおりると、管理費を支払う責任がなくなります。
それにもかかわらず、そのマンションの一室がオーバーローンの状態(金融機関の担保に入ったマンションの一室の価値よりも、残ったローンの未返済額のほうが大きい場合)には、破産管財人による建物の売却がなされず、破産免責後もそのまま住むことができる場合があります。

– 破産者からも管理費を回収するのですか。

はい、依頼者であるマンション居住者全体の利益のためにも、回収しなければなりません。

免責を受けた人は、管理費を支払う責任がなくなるだけであって、債務自体はあるんです。そして、区分所有法は、管理費を滞納した状態で他の人に物件の所有権が移転すると、その新しい所有者は滞納管理費も引き継ぐと定めているんですね。次の所有者には破産免責の効果は及びませんので、管理組合は新所有者に対して管理費の請求をすることができます。

そこで、マンションの所有者を変更する手続きをして、新所有者から滞納管理費の回収を実行します。破産と免責を経た後もマンションに住み続けられたとしても、管理費を滞納している以上、結局は出て行かなければならないのです。

– 河口先生は、マンション管理組合の味方ですからね。でも、どうしても管理費を支払えない相手方に対する、フォローのようなことをなさったりもするのですか。

ほとんどのマンションでは、規約によって管理費の遅延損害金が高めの水準で設定されています。管理費の元金の14%とかそれ以上になる場合もありますので、「滞納している分と同じ額を、銀行で借りていただいたほうが安く済みますよ」とアドバイスしたりもします。

– そういった交渉で回収していくんですね。

組合は管理費を回収できますし、滞納していた方も負担が減りますからね。あるいは、回収するためにマンションを差し押さえて競売にかけようとしている組合があった場合、「競売よりも任意売却のほうが高く売れますよ」とアドバイスすることはあります。

– 他に難しさはありますか。

一番難しいのは、マンション管理組合の中で、意見が割れているときですね。

– そういうことも、たくさんあるでしょうね。でも、依頼人側で意見をまとめてくれないと、弁護士としては困りますよね。

そうですね。例えば、「裁判をやるべきだ」という側と、「裁判まではやらなくてもよい」という側がいたら、弁護士としてはどちら側に付いていいのかわからないですよね。

– どうするんですか。

私がムリヤリまとめるということはしませんが、まとまる方向に誘導することはあります。最終的には決議を取ってもらうことになります。

– でも、少数派が納得しなかったりしますよね。

その場合は、しっかり説明をしてフォローします。たとえば、ただ口頭で説明するよりも、提案書のようなかたちで書面を作成してお渡ししたほうが、納得していただきやすいです。

管理費回収の業務に、数多く携わってきた経験を活かす。

河口 仁 弁護士

– そういったマンション管理の案件に携わろうと思われたのは、どのようなきっかけからですか。

独立前に勤めていた法律事務所でマンション管理費の回収案件に数多く携わっていたことがきっかけです。

実は、マンション管理の案件を専門に扱っている法律事務所というのは少なくて、数えるぐらいしかないんです。

– ある意味でブルーオーシャンだから、独立したらマンション管理専門でいこうと思われたのですね。

そうなんですが、だからといって儲かるわけではないんです。お客様はマンション管理組合であり、皆さんが各自で毎月1万円なり2万円なりを支払っている中から弁護士費用を捻出していただくことになります。ですから、支出に関しては慎重に判断される傾向があります。
相談内容を伺って、私は依頼を受けたいんだけれども、どうしても弁護士費用を支払えないという管理組合様はいらっしゃいます。