「金融法務」と「中国法務」に特化する、実力派法律事務所 / 本杉 明義 弁護士


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日本の法曹人口が集中する東京都内では、多様な専門性を持っている弁護士も増えてきた。「金融法務」を独自に生業にする法律事務所が、東京メトロ 有楽町線の麹町駅から至近にある。

現在の経済情勢は、ハイリスク・ハイリターンの金融が牽引するといっても過言ではないが、そのぶん、金融をめぐる法的トラブルが後を絶たない。今回は、専門分野で著書もお持ちの本杉法律事務所代表、本杉 明義先生にお話を伺った。

実父が証券マンで、おのずと金融に親しむ

– 先生のご専門は「金融法務」ということでよろしいのでしょうか。

そうですね。金融法務は非常に幅広いので、その中でも「訴訟を中心とした紛争案件の解決」に注力しています。

– 予防法務のようなこともなさっているのでしょうか。

いえ、どちらかというと事後的なほうが多いですね。
平成20(2008)年、リーマンショックが起きる前には、金融機関が中小企業に為替デリバティブを勧めて買わせていたんですね。非常に収益が上がる商品だということで。

ただ、リーマンショックが発生して以降は、円高が進んでしまったんですね。円安であればいいけれども、円高になれば損害になる。しかも、利益も損害も拡大するレバレッジの効いた為替デリバティブを、10年間などの長期契約で締結していたケースもあり、経営が立ち行かなくなる事態に陥る企業が全国で続出したわけです。

そのとき、当事務所に問い合わせが殺到しまして、私は金融ADRで為替デリバティブ問題を解決していきました。

– ADRとは何でしょうか。

裁判所以外の第三者機関で、法律的な紛争を柔軟に解決することを目指す制度(裁判外紛争解決手続)のことを指します。

全銀協(全国銀行協会)には紛争解決手続「あっせん委員会」というADRがありますし、NPO法人で証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)というADRもありますので、こうした場で双方話し合いのもとに解決を進めていったんです。私だけでも約100件ほどの為替デリバティブ案件を受任して、全国各地へ赴きました。

– 弁護士が関わる金融法務というものは、具体的にどのような種類があるのでしょう。

それは多岐にわたります。金融商品取引法など、業法を遵守するようにアドバイスする方もいるでしょうし、資金調達、ファイナンスに関する業務に関わる先生もいらっしゃいます。

– その中のひとつに、金融トラブルに絡む訴訟の代理人としての役割があるわけですね。そのように金融法務に携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

この事務所は平成13(2001)年に立ち上げたのですが、その前には勤務弁護士時代がありまして、そのときに証券会社に関する案件をずっと扱ってきたのです。

元をただすと、父が証券会社に勤めていまして、金融の世界には親しみがありました。弁護士になった後も、父の紹介でたまたま縁がありまして、金融に強い法律事務所に勤めることになったという経緯です。

当時はバブルが崩壊した直後で、証券事故と呼ばれるものが山のように発生していた時代です。なので、仕事はたくさんありまして、この分野で業務経験を積むことができました。

– 証券事故というのは、どういうものなのでしょう。

証券会社と顧客とのトラブルですね。もともと、証券会社は、大口のお客さんに対して、証券取引で損をしたぶんを埋め合わせていたわけです。損失補填といいます。

その損失補填が、平成4(1992)年に刑事罰をもって禁止されました。それで、証券に関する訴訟も急増していまして、この頃も、札幌、名古屋、鹿児島など全国各地の裁判所へ足を運んでいました。

– 株式などの金融商品に関するトラブルとしては、他にどういうものがあるのですか。

たとえば、お客さんに無断で証券を売り買いするような場合があります。極端なケースですけどね。

– 投資信託のようなものではなく、勝手に売り買いをしてしまうわけですか。

ええ、あるいは、相続で大きな遺産を引き継いだことに、証券マンに目を付けられて、よくわからない銘柄を売り買いさせられる場合などですね。

金融法務に詳しい弁護士だと、業法や行政の手続きに長けている方は、証券会社側に就いている場合が多いんです。私も企業の顧問もやっていますが、金融関連の訴訟に注力しています。

– 裁判でなく、交渉で解決してしまうこともあるわけですか。

金融機関との間では、法律上、示談交渉で解決することはできないと定められているんです。それが「損失補填の禁止」ということなんですが、かつて、証券会社が大口の顧客にだけ、お客さんが損をしたぶんを支払って穴埋めするという対応をしていたのですが、「それがけしからん」ということになり、損失補填は一律に禁止されたのです。

話し合いだけでなく、何らかの手続きを踏まなければ、被害を受けた投資家に金融機関はお金を支払うことができません。

ですから、交渉することはありますが、交渉だけで解決するということはありません。とはいえ、その解決は裁判に限らず、民事調停や金融ADRで進めることもあります。