企業の労働法問題に注力。裁判に持ちこまない解決を目指す。 / 川崎 仁寛 弁護士


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千葉の地で、歴史と信頼を積み重ねてきた伝統ある法律事務所が、千葉県庁の近くにある。京成電鉄「千葉中央駅」の近くにある佐野総合法律事務所川崎仁寛先生にお話を伺った。

もともとは政治に興味があった学生時代、「世の中や社会正義について、堂々と語れる人になりたい」という動機から、法律家を目指すことに決めた気鋭の弁護士、その情熱と心情を窺い知るインタビューとなった。

ベテランと対等以上に渡り合うため、労働法に特化する

– 司法修習を終えて弁護士になられて、最初に就職した事務所が、こちらの佐野総合法律事務所なんですね。

そうです。ずっとこの事務所で執務しています。

– 当時は、どのような弁護士になろうと考えていらっしゃいましたか。

労働問題に取り組む弁護士になろうと考えていまして、実際に今も注力分野のひとつとしています。

– なぜ労働問題に取り組もうと思われたのですか。

労働法は、基準が明確に示されている部分もありますが、事案に即した柔軟な解決が図られる傾向があると考えています。判決で「総合的に考慮して」という言葉が使われます。よく言えば事案に適応するルールを立てる柔軟性が高いということなのかもしれませんが、一方で、判決の行方の予測が立てづらい分野なのかもしれないと思います。

よって、経験が物を言う分野だと感じています。
そして、ベテランの先生と対等以上に渡り合うために、労働問題に関する専門性を高めることで、より多くの経験を積もうと考えています。

– 若手であるがゆえの経験値の少なさを、まず、特定の分野に絞ることでカバーしようと考えたわけですね。

そうですね。弁護士として特定の分野について専門性を高めることは、当初から方針として考えていました。

また、労働問題に関わっている弁護士は、会社の代表や責任者と信頼関係を持って向き合っていれば、会社の中の企業文化に影響をおよぼしたり、ときには企業文化を変えたりする機会もあります。

労働問題で労働者側につく弁護士は、案件ひとつひとつに対応します。ただ、同時に100件や200件の案件を抱えるわけにもいきません。一方で、労働問題で会社側につく弁護士の場合、企業文化を変えることで、会社側と労働者側との間で潜在的に存在する100件、200件の労働トラブルを解決できる可能性があります。

– 今までに携わってこられた案件で、印象に残っているものはありますか。

ある企業で、従業員に手当が支給されていました。その手当は「この中に残業代に相当する額も含まれていますよ」という意味で会社が支給していたものだったんです。

この手当を根拠に残業代を支払わなくていいのかということで、会社からご相談を受けました。お話を聞いて、この手当だけで残業代を支払ったものと考えるのは厳しい、という事案でした。なので、「裁判になった場合、言い分としては苦しいかもしれません」と、社長さんにお伝えしました。

ただ、「そんなことはわかってるよ」とお叱りを受けてしまい、当時は反省しました。

– どのような反省点ですか。

知識や結果をお伝えするだけでなく、その前に、相談者に納得していただく必要があるということです。厳しい見込みであっても、わざわざご相談いただいたからには「このような方針で進めてはどうでしょう」ですとか「問題の再発防止のため、このような点を改善してはいかがでしょう」「手当の趣旨をもう少し明確にしませんか」などと、前向きに提案しなければなりませんでした。その後、改めて協議の場を設け、戦略や改善点について意見を交わしました。

このケースは、最終的には和解で終わりまして、明確にどちらが勝ったとか負けたとかいう結果ではなかったのですが、そのときに依頼者である企業の社長から「つねに味方でいてくれた。そのことを本当に感謝しています。これから至らなった部分を素直に見直すことができます」と、お礼の言葉を頂きました。

– 結果は厳しいかもしれないけれども、ともに戦ってくれた姿勢が嬉しかったのでしょうね。

ご自身の経営方針にも反省点があり、改善すべきであると納得していただけたのは、こちらとしても嬉しかったです。

– たとえ裁判には敗れたとしても、依頼者が納得できればいいのでしょうか。

そう思います。裁判に敗れたときに、われわれと依頼者の関係がこじれてしまう場面について振り返って考えてみると、われわれの説明が不十分だった場合が多いんです。

もちろん説明といっても、相手に判断を完全に委ねてはいけないんです。「裁判にしますか、和解にしますか」と尋ねて、社長さんに判断を丸投げするのでなく、われわれができるだけ正確な見通しを立てて、その見通しについて、法的な問題や基準も含めて、時間をかけて説明することが重要です。

メールや電話でなく、なるべく会って話をするようにしています。