税務調査に本気で抗議したいときに頼る弁護士 / 坂田 真吾 弁護士


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日本の弁護士人口の半数以上が集中する首都東京。そんな弁護士過密地帯だからこそ、他との違いを打ち出すための「専門特化」が加速している。

東京・赤坂のビルには、国内でも稀少な「税務系」の弁護士が所属する法律事務所がある。しかもその専門性は、国税不服審判所の審判官として税務トラブルを裁いてきた貴重な経験にも裏づけられている。

今回は、本間合同法律事務所坂田真吾先生にお話を伺った。

国税不服審判所に勤めた4年間で気づいた事実

– 税務に関する法律問題に注力していらっしゃるとのことですが、具体的にはどういった内容なのでしょうか。

税務分野はとても幅広いので、いろいろとあります。個人の所得税や相続税、企業の法人税などに関して、何らかの理由で税金が取られすぎているという問題です。

– その問題に関して、弁護士さんが介入する場面があるということですか。

基本的に、税務に関する問題、税務調査などが入った場合は、ほぼ全て税理士の方々が処理しているといっても過言ではありません。
ただ、税法上、その法律要件に該当するのか、その解釈、その事実認定でいいのか、といった疑いについて、法律家の視点からチェックし、必要に応じて異議を唱えるということも必要であり、その役割を担いたいと考えています。

– 税務の問題に関心をもったきっかけはあったのでしょうか。

もともと、父が税理士で、親族に税理士や公認会計士が多く、税務というテーマに関しては昔から関心や問題意識を持っていました。

子どもの頃、父から、「顧問先に税務調査が入り、かなりの税額の追加の支払いを求められたが、しっかり反論したら支払いを求められなくなった」といった話を、折に触れて聞いたことがあり、弁護士になるなら税務をテーマに取り組んでいきたいという気持ちをおぼろげながら持っていました。税理士の多い家系で、弁護士は私だけなので、ある意味で異端なんですけどね(笑)

– お父様は、坂田先生のお仕事に関して、何かおっしゃっていますか。

いえ、特には言われませんし、「勝手にやれば」と思ってるんじゃないですか(笑)。それでも、今も父と一緒に仕事をすることはあります。

– そうなんですね。なぜ、弁護士になろうと思われたのですか。

私が大学の法学部に入ったのが1995年で、オウム真理教の地下鉄サリン事件などが報道されていた頃でした。最初は刑法に興味があり大学でのゼミも刑事法を選択しました。ただ、憲法は、刑事での罪刑法定主義と同じように税務での租税法律主義を掲げていて、どちらも重要な原則だと思いますが、刑事弁護に注力する弁護士はたくさんいそうだけど、税務弁護を行っている弁護士がほとんどいないと聞いて、気になっていました。

ただ、弁護士として税務問題に取り組もうと本格的に考えるようになったのは、2009年から4年間、国税不服審判所の審判官を務めてからです。

– 弁護士から国税不服審判所の審判官、というのは、どういったルートで就任するものなんですか。

公募があったので応募をしまして、縁あって採用されたという流れです。審判所の職員の多くは国税職員なのですが、2007年以降、民間からも任期付公務員として審判官を外部採用しています。税理士、公認会計士、弁護士等が対象なのですが、私が入る前は税理士と公認会計士しか採用されていなかったので、弁護士としては私の代が第1号でした。そういった環境にいなければ、弁護士が税法を本格的に学ぶ機会はないので、非常に有り難かったですね。

– 国税不服審判所とはどういうところでしょうか。

税務署や国税局の課税処分に不服がある場合には、まず、行政内部でこれを取り消して欲しいと不服申立てを行うことになります。これを不服申立前置主義といいます。不服申立てには、税務署、国税局に対する再調査の請求と、国税不服審判所に対する審査請求があります。審査請求を経なければ、税務訴訟を提起できません。ということで、国税不服審判所は、裁判所の前に、税務訴訟の前さばきを行うような機関といえば分かりやすいでしょうか。判断は裁決という形で出しますが、これは基本的には行政訴訟や民事訴訟の判決と同じような書き方をしています。

– 行政府の中で、そういった審理をする場があるということですね。

そうですね。国税不服審判所は、税務署・国税局と、納税者の間に立って中立的な立場で審理します。事案によっては、「これは税務署の主張がおかしいな」とか、そういった場面に気づくことがあります。

– 公平な立場からご覧になって気づくわけですね。

そうですね。ときには、課税庁側も納税者側も双方が気づいていない法解釈や事実から、「こういうことなんじゃないですか?」と提示することもありました。「そう言われてみれば、そうですね」と納得してもらえるんですが、そういう場面が何度もありました。要するに、国税不服審判所に在籍して、課税処分にも間違いがあること、その間違いをきちんと納税者側の専門家が早い段階で指摘できていないことがあること、という二つの問題意識を抱き、そこに法律家として関与することでよい解決を導くことができるのではないかと思った次第です。

– 税務調査には、意外と法律的な穴があるということなんでしょうか。

多くの調査では、税務職員が妥当な指摘をしていると思いますが、間違った指摘もあるということです。問題のある税務調査に対して、弁護士が意見書を書くのが当たり前の世の中にしたいです。